心霊ファイル…怨み-3
「ええー、何ィ?」
いきなりの出来事に私はビックリ!
杏里は女性の体を揺さぶり始めた。
そこへタイミングよく、1人の看護士さんがやって来た。
「ルリ子さーん、こんな所にいたのネェ!
出歩いちゃあダメって言ったでしょう!?」
慣れた手つきで女性を抱き起こし、持って来た車椅子に乗せる看護士さん。
体が大きいから、細身で少し小柄の女性の体なんか軽々と抱えられる。
杏里は女性に話しかけてみた。
「大丈夫、ですか?」
杏里の顔をまじまじと見つめる女性。
優しい表情をしているけど…
精神的に随分と疲れているのがヒシヒシと感じられる。
「は…、はい…」
か細い声で返事をした女性。
名前は柳沢ルリ子さん・52歳の主婦。
2歳年上のご主人・真澄さんと、娘さんで大学に通う仁美さん。
そして…
その妹さんで、高校に通う歩美さんの3人の家族がいる。
ルリ子さんはすぐに、入院している精神科病棟の自室に戻った。
杏里は予定を変更して、ルリ子さんがいる個室に足を運んだ。
病室には真澄さんと歩美さんの2人の姿があった。
さっそく私たちは挨拶を行った。
「アナタが有名な大学生霊能者だね?」
真澄さんは杏里を知っていた。
別に知り合いだからじゃない。
いくつかの心霊事件を解決しているから、杏里は巷で有名になっているのだ。
…大学生霊能者だなんて、オーバーな言い方。…
杏里はそう反論したがるみたいだけど…
でも実際に、杏里はそれだけのパワーを持ってるんだから…
そう、思われても仕方ないんだよネェ。
ルリ子さんは色々な問題を抱え込んでしまって鬱病状態になり…
拒食症にもなってしまったらしい。
毎日、適切な治療とカウンセリングで病を癒やしているようだ。
でも症状はなかなか回復せず、良くなる方法が見つからないと言う。