Lesson xxx U B-1
リビングのソファーで眠っていると人の気配で目が覚めた。
「彩…?」
薄い明かりに浮かび上がった彩は俺の肩に手を伸ばそうとしていたところだった。
「征也…。ごめん。起こしちゃった?」
「いや…。どうした?」
「…隣…いい?」
俺は頷いて彩が座れるようスペースを空けた。
「…神崎さんと…付き合ってるの…?」
長い沈黙を破って彩が小さく呟いた。
「ああ」
「そう…。彼女…キレイな子ね…」
彩の声音に嫉妬が混じってると思えたのは気のせいか…?
「見かけはな。でもあいつ、可愛いんだ。まぁ…生意気だけど」
神崎はどうしてるんだろう…。
生意気だけど涙もろいあいつだから泣いてるんじゃないか…?
神崎が家を飛び出した時、俺はあいつを追いかけるべきだったのかもしれない。
でも傷ついた彩を放っておくのも躊躇われた。
彩が話しかけてこなかったからぼんやり神崎への想いに囚われていると、ふいに彩が腕を絡めてきて驚いた。
「彩?」
「今夜は甘えさせて…」
俺の腕に頬を寄せてギュッとしがみついてくる。
彩は昔と変わらない。
何か不安な事があるといつもピッタリくっついていた。
最初はそれが可愛いって思った。
でもいつしか重荷に変わって、彩もそんな俺を感じたのか喧嘩が絶えなくなった。
今の彩を守りたいとか大事にしたいとは思ってない。
傷ついてるのを放っておけないって思うのは同情だろう。
でも今は同情でもないよりはマシかもしれないと思った。
「ねぇ…征也…」
微動だにしない俺に彩が潤んだ瞳を向けてきた。
俺だってそれなりに遊んできたんだから、こんな時の次の言葉は予想出来た。
「抱い…」
「それは出来ない」
彩に最後まで言わせずにキッパリと断った。
彩の腕を掴む力が強くなる。