夏の夜のお話・百年恋詩-1
[ 俊… ]
私はアパートの前で待っていた男子生徒を抱きしめた。
こうして教師と生徒の間柄である時間が長いほど、愛しさが募るのです。
いい大人のくせに少年に恋い焦がれる自分がやっぱり時々複雑に思える事もありますが、俊をいくら愛しても愛し足りないほど…
鍵をかけて、私は彼に抱きつくのです。
眼鏡を外してブラウスのボタンを外し…
裸になって互いに愛を交わし合うのです。
女教師と男子生徒…
私は自分の乳房を彼にふくませ、彼の愛しいシンボルを体の中に導きます。
重ねあった体と体がしっかりとくっつくように…
私、どうしようもなく愛してしまっているのです。
授業の間ですら長いのに、私は百年もの間待ち続けていたのですから…
それは私がまだ高校生だった頃。
あるいはみなさんの記憶にもまだ残っているかも知れません。
まるまる十八日間もの間、行方不明になっていた少女の事件…
… … … …
その時私はひとり校舎の裏にある空き地を歩いていたのでした。
私が生まれ育った京都の街はご存知のように重要文化財などの史跡がとっても多い場所です。
誰もが訪ねた事のあるような場所に限らずいろんな所に由緒のある小さな史跡が点在している土地でした。
ともかく私は校舎の裏の空き地をひとり歩いていました。
何もない普通の空き地です。
それは隣接するテニスコートにいるひとりの男の子の目を惹きたかったから…
彼は私を見つけてもまったく気にもかけてくれないかも知れません。
彼だけでなく男子テニス部員全員がその空き地を見るわけですが、当時もフェンスに貼りついてた女生徒たちに人気の高い彼に私ができる唯一のアプローチだったのです。
そして、たまたま事件を目撃したのも彼でした。
京都の女子高生、謎の失踪…
最後の目撃証言はテニス部員のA君。
[ 彼女はよくその空き地で見かけていました。
その時、たまたまそっちを見ていたら彼女は何もない空き地に忽然と姿を消しました。
最初は何かにつまづいて転んだのかと思って、思わず立ち上がって見てみましたがそこには低い雑草が生えているだけで転んだ彼女の姿はなかった… ]
彼の証言は新聞にも取り上げられましたが、結局捜査の対象にはならず私は何者かによって空き地から連れ去られたという方向に考えられたのです。