夏の夜のお話・百年恋詩-4
[ 俊といえば格好よかろう?
実は茂吉と申す百姓の倅だ ]
そういって笑う彼は私にとても優しくしてくれたのです。
私は日本史なんかカラっきしで、京都の街で天皇と将軍が戦争になったのは知っていますが、なぜ侍がいなくなったのかさえ分かりませんでした。
[ 私、佐久間宏美といいます ]
[ 佐久間?…宏美?
変わった名だなぁ
お公家の出か? ]
[ 違いますよ
父は住朋金属の課長で… ]
[ 何だかよく分からぬなぁ
ともかく、その名は怪しまれる…
今日から(ひろ)と名乗れ、早瀬俊の妻でひろだ
……
あ、仮の話しだ
何もその…夫婦になれとまでは申しておらん ]
俊はとても照れくさそうに言いました。
この頃、私はまだ現代に戻りたいとばかり考えていたのですが、どうしたものか皆目見当もつかない状態でした。
でもこの後、若い侍の優しさと素直な生き方にだんだんと惹かれていって…
私は不幸にもこの男の妻になってしまってもいいと思い始めるのでした。
第二部につづく