夏の夜のお話・三姉妹-3
[ 何話してたの? ]
私は努めて穏やかに話しかけた。
[ いや、何でもないさ…それより ]
その瞬間…
私は自分の中にあの姉を見た。
[ 知ってるのよ!
あなた愛美にもあんな事してるんでしょ? ]
[ 待てよ、何の事だよ?
落ち着けって… ]
[ お姉ちゃん… ]
私はますます気性の荒い姉のようにまくし立てる。
[ 姉はあんな事をされて悦んだの?
私はつらいわ。
ちっとも良くない…
愛美はあんなのが気持ちいいの? ]
[ ちょっと待てったら… ]
裕之は愛美に少しきづかう様子で
[ あれは君が… ]
[ 分かった。
あなた愛美を妊娠させたのね? ]
[ 落ち着けって… ]
[ お姉ちゃん、聞いて… ]
裕之は肩を抱きかかえて私を座らせ、愛美は私の手を握った。
裕之と結婚を直前に控えた私は急に失踪したという。
そしてあくる日に私は交通事故に遭って意識不明のまま見知らぬ病院に保護されていたという。
外傷はたいした事なかったものの頭部を激しく打ったせいか数日を経ても意識は戻らず、回復の目処はつかない状態となっていた。
昏睡から覚めない私から誰もが少し目を離した間に私は意識を取り戻し、またどこかに失踪してしまったという。
数日後に街で発見された時には自分の事を涼子と名乗っていたという。
記憶が全くなかった…
つまり…
最初から私には双子の姉など存在しなかったと…
そんなバカな話はないでしょ?
何日も寝たっきりの病人が突然意識を取り戻しても自力で立つ事すら危うい…
それに…
私は唯一、姉妹で撮った写真を一枚だけ持っている。
七五三に晴れ着を着て三姉妹揃って撮った写真だ。