距離〜千華から見た視点〜-4
キューピッド気取り?
欝陶しい。
なんで私を見てくれないの?
こんなにも好きなのに。
こんなにも想ってるのに。
このままじゃいけない。
剛の彼女になるべきは私なんだから。
だから、見せ付けてやった。
放課後、あの女が部活の後に帰るタイミングで剛を呼び出して。
あの女の目の前で、しっかり目に映るように。
他の下校中の生徒からも見えるように、校門で。
剛に抱き着いて、キス。
我ながら大胆だったと思う。
だけど構ってなんかいられない。
「私、剛のこと好きなんだ。ずっと前から、大好きなの。…気付いてるでしょ?だから私の大切なファーストキスは剛にあげる。私、剛の為なら何だって出来るし、何だってしてあげたい。だから…ね」
そして、強引だったけど交際はスタート。
あれだけ他の生徒にも見られてたし、あの女もしっかりこっち見てたし、その次の日には私から付き合ってることを周りに言い触らしたからね、剛も否定なんか出来ない。
剛は最初かなり戸惑ってたけれど、私ももう後には引けない。
だけど始まりは強引であってもこれからもっとお互い深くなっていけばいい。
もっと近づいていけばいい。
そう思った。
お陰であの女も剛から離れていった。
剛も、あの女とは話さなくなった。
剛はすごく優しい人。
今では私のことを普通に好きだと言ってくれるし、彼女としても認めてくれてる。
キスも、セックスも、何度もした。
彼女として一番近い場所で剛の趣味や考え方に触れると私まで感化されるし、いつも新しい発見がある。
その度により一層剛を好きになるの。
だからもう私は剛が離れて行かないように必死。
より剛に愛されるように、ヘアースタイルもメイクもファッションも、聴く音楽も読む雑誌も、剛の好みにどんどん変わっていった。
好きな人の為なんだから一切苦では無かったし、寧ろ自分が剛の色に染まって行くのが自分でも心地良かった。