Lesson xxx UA-3
どれぐらいそうしていたんだろう。
ただ支える事しか出来ずにいた俺に彩がようやく顔を上げた。
「……ごめ…ん…。変なとこ見ら…れ…ちゃっ…たな…」
気丈に振る舞う彩を痛々しくてまともに見れない。
「いや…。今日はもう帰った方がいい…」
「うん…」
「俺が適当に言っとくから…。帰れるか?」
「うん…」
言葉とは裏腹に彩の手は俺にしがみついたままだった。
今日は一人にしない方がいいか…。
「…一緒にいた方がいいか…?」
しがみつく指が一瞬痛い程の力で腕に食い込んだ。
「…征也さえ…よければ…。そばに…い…て…」
「ああ」
家で待ってる神崎には悪いが今日はだめになった事をメールで送った。
彩の家に向かおうとしたが、今日は家に帰りたくないと言うので俺の家に連れてきた。
部屋を見上げると明かりが点いていない。
神崎は帰ったんだろう。
きっとすごく怒ってると思うが彩をこのままにしておけない。
神崎、ごめんな。
不安なのか、しがみついてくる彩を部屋に案内した。
玄関を開けると神崎の靴があった。
帰ってなかったのか!?
彩を玄関で待たせてリビングの電気を点けるとソファーで神崎が眠っていた。
「神崎」
そっと揺り起こすとぼんやりと目を開けた。
「ん…。先生…?」
「帰らなかったのか?」
目を擦りつつ起き上がった神崎は思い出したのか頬を膨らませて睨んできた。
「帰ろうとしたら雨が降ってきて…。濡れるのイヤだったからここにいただけ」
「悪かったな」
「…眠ったら少し機嫌直ったから許したげる」
「征也…?」
いつまでも呼びにこないのを不審に思ったのか彩がリビングまで入ってきた。