距離〜佐山から見た視点 2〜-3
努めて冷静に、答える。
「そっか」
「そうなのだ」
しばし無言。
幸から切り出す。
「ねぇ、私にもダンス教えてよ」
「あー?めずらしっ」
「いいじゃーん。早くっ」
「だってあんた、前にも何回か教えたけど、リズム感が…」
「いいから!それに前教わったのは難し過ぎたの!だからもっと基礎的な、簡単なやつからさ、教えて」
「んー…」
携帯灰皿でタバコを揉み消し、立ち上がる。
「じゃあ、ほんとに簡単なやつな。まずはクラブから」
「あのカニみたいに横に動くやつ?」
「そうそう。まずは両足の踵を揃えてつま先を逆ハの字に軽く開きます。で、右足のつま先と、左足の踵に重心を置いて…右にこうっ」
「………」
「その状態から、今度は左足のつま先と右足の踵に重心を移動して…こうっ。それを交互に連続すると……ほっ、ほっ。こんな感じ。逆に左に移動する時は、今の逆ね。はい、やってみ」
「………よっ…ほっ……あれ?」
「うん、違うね。もっとこう…こんな感じ」
「あっ、分かった。…ほっ…ほっ………ふんっ…。…どうよ?」
「うん、ダサいね。なんかウ〇コ我慢してる子供みてーだよ。じゃなくてだな、もっとこうスムーズに…こうっ」
「むー。……ほっ…ほっ…ほっ…。あっ、今のどう?」
「んー、さっきより良いね。ならもっと膝も使って、肩と腕もリズムに乗せて…こうっ」
「おーっ、カッコイイじゃん!それっぽいよ!」
「うん、まぁ、佐山さんよりはそれっぽいわな…。ほい、やってみ」