距離〜佐山から見た視点〜-1
「またコクられたのだー」
「今度は誰よ?」
「1年生。3組の原って子。女子バスケ部だと」
「ふーん。かわいかったの?」
「んー結構好みだったなー。しかも結構巨乳だったしー」
「…で?」
「まぁ、一瞬巨乳に揺らいだけど、残念ながら、ごめんなさい、と」
「そらそーだ。剛くん彼女いるもんね」
「…まーなー…。でもその原ちゃんさ、「先輩に彼女がいるの知ってます…。でも…それでも…諦められません!付き合ってくださいっ!」ってさ。そもそも諦め云々の仲でもねー初対面の子なのにさ」
「ほーっ。しかし凄いねその子。相当剛くんに惚れてんよ」
「まぁ、有り難いのやら何なのやら。丁重にお断りしやしたけど」
「彼女さんには言ったの?」
「いんや。めんどくせーし。どうせまたごちゃごちゃ小声言われんだろうし。下手こいたら泣くし」
なんて、放課後の屋上での一場面。
一つ大きく欠伸をしながら、剛くんは隣でタバコに火を着けた。
「おーい、タバコは良くないから。ね?今のうちにやめときなさいって」
「お母さんか!」
「はい。学校での剛くんの母です」
「うっさーい。学校でまでおかんは必要なーい」
と言って、目を細めてタバコを吸う。
剛くんがタバコ吸ってるの知ってる人って、学校に何人いるんだろう。
私と、順平くんと、義明くんと、進くんと…。
少なくとも剛くんの彼女は知らない。
千華ちゃんは。
それだけでも、少し嬉しい。