距離〜佐山から見た視点〜-4
いた。
剛くんの彼女。
友達と何やら騒ぎながら、剛くんらの方見てはしゃいでる。
一瞬、目が合った。
彼女の顔から笑顔が消えた。
気がした。
「こら田中ー、佐山ー。お喋りもいいけどちゃんと手も動かしなさいよーっ」
顧問の木本先生の声で、我に帰る。
「うぃーっ」
気の無い返事をして改めて向こうのベランダを見ると、既に彼女は教室に戻ってた。
「さっき千華ちゃんさ、幸(みゆき)のこと睨んでなかったかー?私は大変気分が悪いぞー」
先生に注意された手前、小声で美沙が言ってきた。
「うん」
知ってる。
別に今に始まったことじゃないし。
いちいち気にしてなんかいられない。
「剛くんには言ったのかー?」
「ううん。私なんてただの友達だし、彼女さんへのクレームを言える立場じゃないっす」
「彼女ねー…。美沙的には、正直千華ちゃんより幸の方が…」
「美沙よ、それ以上言ってくれるな」
「んー…すまぬ」
外からの音楽が止まった。
サークルの活動が終わったんだろう。
でも私の頭の中では、さっきの一曲がまだ流れている。