距離〜佐山から見た視点〜-3
でも、やっぱりね。
出来れば、出来るのなら、彼女になりてーんだなー…。
「だはーっ…」
意味の分からない声と溜め息を吐き出して、私も部活に向かった。
中庭の見える、西棟の3階。家庭科室の窓際のテーブル。
必ずこのテーブルで、私達は料理をする。
あれが見えるから。
大親友の美沙とペアで、今日はクッキーを。
「あ、聴こえるね?やってるね?。ズンズン響いてますね?。…おっ、すごいっすね?」
美沙が言う。
「うん」
「しかしまぁよくあんな動き出来ますな?。おっ、すげっ…おっおっ」
「うん」
「カッコイイね?。あ、次剛くんだ」
「……うん」
いつもこの場所から、ダンスサークルを見ながら、私は家庭部の活動に励む。
いや寧ろ、ダンスサークルを見る為に、ここに来てるのかな。
「おーっ。剛くん、今日もロボットみたいなのだ。カッチカチやぞー」
「うん」
「合わせてるこの曲、カッコイイですな。誰の曲なのだー」
「…あ、あたしこの曲知ってる。この前剛くんに借りたCDの中に入ってたよ」
「ほーっ。私も借りよーっと。しかしまぁ彼ら、爽やか極まりないですな。そりゃダンスサークル、モテるわけですよ。それにサークルのマネージャー募集に集まった女子の数、70人くらいいたとかなんとか」
「本人らはただ踊りたいから踊ってるってだけの話なのにね」
「でもほら、私らみたいなギャラリーが、他にもちらりほらり。あ、進くんの彼女さんと順平くんの彼女さんもいるわー。あと…あ、千華ちゃんも見てるねぇ」
「…え?」
中庭を挟んだ向こう側、東棟の4階の吹奏楽部の使ってる音楽室。
そのベランダ。