距離〜佐山から見た視点〜-2
ブーッ ブーッ ブーッ
剛くんの携帯が鳴る。
話しぶりからして、多分順平くん達だろう。
電話を切り、白い煙を私に吹き掛けながら、言った。
「説教終わったとさ。高梨のやつ、話なげーのなー」
「まぁ、授業中に漫画はね、良くないよね。てかタバコの煙、私に吹かないで下さい。臭くなるでしょー」
「喫煙者の隣にいるのが運の尽き。つか順平は、下手くそ。ありゃバレるべ。しかも高梨にパクられた本、あれ俺のなのよ」
「あらま、ついてないねー。で、もう行くの?」
「ん」
ブレザーの内ポケットから携帯灰皿を出して、タバコを揉み消す。
立ち上がって一つ、大きく腕を伸ばす。
で、よろける。
「あ、やべっ。立ちくらみ」
「低血圧だもんね。朝ごはんちゃんと食べなって言ってるじゃん」
「だからさ、お母さんかって。んー…。ほんじゃ行くわ。またねぇ?」
「うん。また明日」
また伸びをして、剛くんは行った。
順平くんたちとやってる、ダンスサークルへ。
「ダンス部」でないのは、メンバーの進くんが
「部ってなくねー?部って。絶対ダサいって」
って猛反対したから、らしい。
でも実は生徒会の書類にはばっちりと「ダンス部」って書かれてたりする。
これは特に進くんには秘密。
「お母さんねー…。まぁ、悪くもない、けど…」
一人、ごちる。
ほんとは、お母さんなんかイヤ。
私は臆病だから、その1年生の女の子みたいに、彼女の存在関係なしの告白なんて出来ない。
今の剛くんとの関係、崩したくないし。