想-white&black-F-3
「激写!」
「えっ!?」
っと言った時には既に時遅くて、目の前で携帯電話のカメラがシャッターを切る音がした。
「ん?、油断してる花音もいいな」
「あさっ、麻斗さんっ!?」
驚いている私の前で携帯の画面をにこにこと眺めているのは麻斗さんだった。
いつの間に来てたのだろう。
ぼーっとしていて気がつかなかったが、そう言えば周りが騒がしかったような気がする。
そんな私と周りの状況など全く気にしていないといった麻斗さんは少し屈むようにすると、視線を私の真正面に合わせて見つめてくる。
「おはよ、花音。これから何か予定あり?」
「いえ……、普通にお昼を食べようかと」
チラリといつもお昼を一緒にしてくれている友人に視線を送る。
「ふうん……。ねぇ、君。この子借りてもいいかな?」
麻斗さんはぽんと私の頭の上に手を乗せながら、眩しい笑顔をその子に向けていた。
「は、は、はいっ!! もう全っ然構いません。ねっ、間宮さん」
顔を真っ赤にしてキラキラと瞳を輝かせた友人はあっさりと麻斗さんの誘惑に負けてしまった。
心の中で密かに溜め息を漏らす。
「ありがとう。今度埋め合わせがてらお礼するよ」
麻斗さんはスッとその子に近づくと、手をとり甲にチュッと軽くキスをした。
「あ……ああ……あ」
「ちょっ……、大丈夫っ?」
麻斗さんに触れられた友人は目眩でも起こしてしまったかのように、ふらふらとしてまともに立っていられないようだった。
「ちょっと刺激が強かったかな?」
とは言っているがどこか楽しげな様子に多分分かっていてやっているんだろう。
「まあいいや。行こっか、花音」
「えっ、ちょっ……、待ってください、麻斗さんっ」
私は麻斗さんにぐいっと手首を引っ張られるようにして強引に教室の外へと連れていかれてしまった。
それと同じ頃、私の教室に向かう一人の人影があったことも全く知らずに。
「ちょっ、麻斗さんっ。どこに行くんですか!?」
「ヒ・ミ・ツ」
麻斗さんはあれから私の手首を掴んだままどこかに向かって歩き続ける。
訳も分からず私はただ引っ張られるままについていくしかなかった。
(一体どこに連れていく気なんだろう……。)
正直言って麻斗さんとは数回会っただけでどんな人なのかもよく分からない。