想-white&black-F-11
「あ、あの……」
「最初はさ、楓の女っていうから興味持ったんだよね。でもどうせいつもみたいに一回寝れば終わりかと思ってた。あいつってそういうヤツだから。どんな女に対しても特別な感情は抱かない。でも花音は今まで見てきた女とは毛色も違うし、聞けば一緒に住んでるって言うじゃん? それに何度もセックスしてるみたいだし」
じっと私の瞳を見つめる麻斗さんの言葉になぜかずきりとした痛みが胸を襲う。
楓さんが特定の恋人を作らないことは知っていたけど、一回関係を持ったら終わりだなんて話は初めて聞いた。
私も今までいなかったタイプというだけで、たまたま続いているだけなのだろう。
そんなことを考えていると余計に胸が苦しくなっていく。
「……楓さんにとって私がちょっと物珍しいだけですよ。きっとそのうち飽きます」
「本当にそうかな?」
え? と麻斗さんの顔を見るといつにない固い表情だった。
「楓は気に入ったものはいつまでも大切に持ってるヤツだよ。花音のこともそう簡単に手放さないと思うけどな」
「まさか」
「例え飽きるとしても俺はそれまで待っていらんないんだけど?」
「……んっ」
言い終わらないうちに男らしい唇が私の唇を塞いでいた。
触れ合った部分が離れないように角度を変えながら何度も何度も口づけてくる。
激しい訳ではないが息継ぎをする暇すら与えられず、頭の中がぼんやりとしてきた頃ようやく唇が離れた。
「こうして花音とキスしたかった。思う存分その唇を味わいたかった……」
「麻斗、さん……」
息が上がり、絞り出すように出した声が掠れていた。
「楓の家で花音とあいつがキスしてるのを見てどうしてか目が離せなくなった。あの唇に触れたい。どんな風に柔らかいのか、どんな風な声を漏らすのか、まだどんな反応を返してくるのか……。どうしようもない衝動にかられたんだ。だから本当は優しくしてあげるつもりだったけど、我慢できねーかも……」
そう言って麻斗さんは鼻先を私の首に押しつけると、ちくりとした微かな痛みをもたらす。
「だ、だめっ。跡をつけたら……っ」
―――楓さんに見られる。
必死で身体を捩って逃れようとするが麻斗さんの力はますます強くなり、それどころか距離をより詰められ身体全体で押さえつけられるような形になってしまった。