湯けむりチャイニーズ-1
カタコトと…
列車は私ひとりを連れて思い出という駅を離れてゆく。
いつか見たようなこの景色…
なんて。
傷心旅行のフリした暇つぶし旅行なんです。
懸賞で当たった温泉旅行…
父と母にささやかな贈り物のつもりが父は魚釣り、母はお友達と大阪見物などに行ってしまったのです。
有給休暇を持て余した私はペアチケットなのにひなびた温泉にひとり旅ですよ。
あぁ…せつない。
でも、平日の温泉旅行って悪くないですね。
なぜか、わざと寂しそうなフリして傷心旅行気取っちゃってるんですよ。
若い女のひとり旅なんて、けっこう男性の視線感じるんですよね。
おじさんばかりですが…
それはともかくイイオトコツクロウ傷心旅行。
さて…
いよいよ露天風呂初体験です。
これ、意外に無防備でスダレみたいな衝立てが一応、あるんですが低くて見えちゃいそうなんですよ。
まぁどうせ誰もいないし、お湯が白く濁ってるからまぁ…いいかなんて。
それで岩にもたれてゆったり手足を伸ばして…
あぁ…癒やされる。
…と、思ったのもつかの間。
なんだか騒がしい声がしたかと思えばオヤジの軍団……
こ…混浴?
そういえば女湯も男湯もなかった…
ような…
………。
[ やあ、こんにちは ]
[ こ…こんにちは… ]
挨拶交わしたが最後私は素敵なおじさまたちに完全に包囲されてしまいました。
ど…どうやって出ようか?
ちっとも癒やされない…