秘密の四角関係(7)-4
「『最愛』と『再愛』がかかってたんですね……いいお話でした」
「そうか? 途中から周りが五月蝿くて現実に引き戻されたからなぁ……」
彼は首を傾げながら言う。
「すみません」
グスッと鼻を啜り、早紀は弁明した。
「あ?……まぁ、いい話だったからな。感動するのも無理ないさ」
悠也は慌てて彼なりのフォローを施す。
「でも、所詮は想像の世界だ」
「え……?」
「……腹減ったな。何か食うか」
少しの沈黙の後、彼が誤魔化すように言う。
「はいっ」
早紀は悠也の言った事が気になったが、詳しく聞く気にはなれなかった。
正確には、彼のオーラがそこへ踏み込むのを拒んでいたのだった。
夜。
早紀の胸はときめいていた。
大会の近い有美と友香は今夜はいない。
悠也のくれる快感を独り占めできることに、無意識に喜びが込み上げていた。
「失礼します」
悠也の部屋には異様な空気が立ち込めている。
頭を垂れた悠也から、混沌としたオーラが滲み出ていた。
「今日は無性に機嫌が悪い」
ぼそりと言った彼は、早紀の手首を掴むと、ベッドへ引き倒す。
いつになく乱暴な悠也は、本当に虫の居所が悪いらしい。
「私のせい……ですか……?」
早紀の脳裏に、例の言葉が思い出される。
「間接的に、な」
「きゃっ」
彼女の短い悲鳴が室内にこだました。
──な、何か違う……
早紀でさえ初めて見るの彼の様子は、加虐心で満ち溢れている。
「あぁっ……いやっ、んん!」
早紀は強引に衣服を剥ぎ取られ、その白い肌を晒け出す。
押し黙ったまま彼女に跨がる悠也。
彼は、たわわに実る早紀の乳房を絞り上げた。
「んっ! んくぅ!」
苦しい中でも喘ぎは洩れてしまう。
激しく鷲掴まれた早紀の双丘は、そこだけ不自然に赤く染まった。
「挟め」
「はあぁ! はいぃっ……」
乳首が片手で摘まみ上げられ、出来上がった谷間を肉塊が占領する。
早紀は手で胸を押し寄せ、下った指示通りにそれを強く挟み込んだ。
上下に揺さぶり、擦りあげる。
柔らかなすべすべの肌は、彼のモノに絶妙な快感を与えた。
「もっと強く」
低い声で冷淡に言い放たれる命令に、もはや彼女は肯定の意しか表すことができない。
言われたことを実行しながら、悠也の冷たい視線を感じていた。
「そのまま舐めろ」
胸で奉仕を続ける彼女に、新たな指令が降ってきた。
「は、はい」
乳肉におさまらない亀頭を舌で掬いながら、視線を彼に向けて様子を窺う早紀。
舌先にカウパーが絡まり、淫靡に糸を引く。
それを絡めとりながら、彼女は健気に奉仕を繰り返した。
「ふぁあっ!」
体を仰け反らせた早紀が、突如甲高い声をあげる。
彼女の花弁を押し広げ、悠也の指が侵入してきたのだった。
「誰がやめていいって言った?」
言い切る前に彼の指が扇動され、蜜がかき混ぜられる音が溢れた。
「あぅう! くふんんっ!」
早紀は壊れたオモチャのように体をビクつかせ、その快感から逃れようともがく。
しかし、弄ばれている女口は、喜びの奏でを響かせていた。
──すごいっ……イイよぉ……
いつもの“服従する快感”とは別の快感が早紀の心を蝕んでいった。
悠也の欲望が蜜壷にあてがわれる。
「ひうぅっ!」
溢れる愛液を押し退けて、それは一思いに突き立てられた。
早紀の両手は頭上で束ねられ、支配されている感覚がさらに彼女を欲情させる。
何の前触れもなく、彼は腰を荒々しく打ち付けた。
その全ての衝撃は、早紀の奥まで突き上げる。
「んむぅう! んんっ!」
口を口で塞がれ、喘ぎになりきらない声が絶え間なく洩れ続ける。
積極的に絡め合う舌は、粘着質な音をならしていた。
そしてその時は訪れた。
「んっ! んんーーっ!」
接吻したまま、早紀は背中を浮かせた。
下半身が上下に弾み、快感が体の方々を緊張させる。
「早紀……」
呼ばれた方に顔を傾けると、先程まで中を荒らしていた肉棒が彼女の眼前に迫っていた。
躊躇いなくそれをくわえた早紀は、仕上げの口舌奉仕を織り成す。
そして、絶頂の証である白濁を、喉を鳴らして飲み下したのだった。
虚ろな瞳の奥の方で、服従の光が確かに輝いていた。