憂と聖と過去と未来 6-4
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卒業式は、なんの感動もなく終わった。
ささやかな幸せを噛みしめていた高校生活は、いつの間にか佐山が全てになった。
毎日佐山が言った通りに行動し、自由はなくなった。
このあとも佐山と過ごさなければいけないのだろう。
高校最後の日は、憂の姿をほとんど見ることもなく終わった。
憂の制服姿を記憶に収めることもできずに。
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大学の合格発表の日、見に行く気はなかったが、どうしても憂に会いたい。
そう思ってしまった俺は制服を着て家を出た。
大学に着いたが、憂の姿は見えない。
この人混みであの小さな体を探すのが容易でないことはわかっていたが、それでも懸命に憂を探した。
俺は帰宅すると、大きく息を吐いた。
結局、憂は見つからず自分の番号があることだけを確認して帰宅したのだった。
何だか合格しても心から安堵できなかった。
最初から決めていたこの大学への進学。
合格するのは当たり前の目標だったが、憂が受けると知ってからは、憂と大学生活を過ごすことだけを考えてしまっていた。
だからこれで憂が受かっていなければ…
俺は惰性で大学生活を過ごすことになってしまうかもしれない。
憂…頼むぞ…
いろいろ考えていると、携帯が鳴った。
相手は佐山に間違いない。メールの内容は呼び出しだった。
結果を知りたいのだろう。
俺はそんな気分じゃないにも関わらず、そそくさと着替えを始めた。