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憂と聖と過去と未来
【幼馴染 恋愛小説】

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憂と聖と過去と未来 6-3

放課後、いつものように佐山の住むアパートに二人。

リビングに入ると同時に佐山は後ろから抱きついてくる。
そして何かを囁き始めた。
「ふふ…知ってる?」
「…何を」
「柊さん、今日クラスの男子に告白されたんだよ」
また憂の話か…
だが、少し話の内容が気になる。
しかし表情や態度に出してはいけない。
「……だから何だ」
「話の続き、知りたくないの?」
「別に」
「ふふ、即答」
「……」
「柊さんは断ってたけど、何て言ってたと思う?」
「…」
「たとえ君と付き合っても、きっとあたしは聖が一番だと思うからから、だって。笑っちゃうよね。まだ夢見てるみたい」
歯を食いしばって震えてしまいそうな衝動を必死で堪える。
「それに面白い話も聞いたわ。柊さん、大学志望に切り替えたんだってね」

ついにばれたか…
きっと佐山は話を盗み聞きしていたのだろう。
さすがの憂も佐山の前でこんな話はしない。

「柊さんはどういうつもりなのかな?ふふ」
未だ佐山は俺から離れずに後ろから話しかけてくる。
「……」
「聖くんと同じ大学を受けるみたいだよね」
「…だからなんだ」
「?」
「もう憂との繋がりは絶たれている。お前は気にし過ぎ…っ!!」
俺が言い終わる前に佐山は勢いよく飛びついて俺の首筋を噛んだ。
半端な力で噛みついたわけではないらしく、首がズキンズキンと痛む。
「…つ」
ぱっと離れた佐山を睨みつけるため振り返る。
「…じゃあ、これはなんなのかな」
「……!」
佐山の手には、見覚えのある包み。

しまった…
ポケットから抜いたのか。
間違いなくこれは俺のミスだ…
何の警戒もなくポケットに入れたままにしていた。

「はい、聖くん、さっきの言葉、もう一度言って」
「…」
「言いなさい!」
佐山の手が俺の頬を弾いた。
チビな憂と違って、女にしては長身の佐山は簡単に手が届く。
「…」
「言いなさいよ!ほら!」
もう一発、手加減など無用というようなビンタが頬に当たる。
「もう憂との繋がりは絶たれている、でしょ!」
三度、バチッという音が室内に響く。
俺は正直痛かったが動揺することはなかった。
もうこんな仕打ちは一回目や二回目などではなかったからだ。
「ふふ…あはは…あはははは!!」
「…」
普段はトーンの低い佐山の声が、甲高い笑い声に変わった。
「…じゃあ、毒が入ってないか調べてみようか」
「!?」
佐山はそう言うと、包みを持ったままキッチンへ向かった。

しばらくして何をするのかわかった。
「や…やめろっ!」
「うるさいっ!」
佐山は泣いていた。


もう…わけがわからない。


結局、俺は憂の作ってくれたチョコがどんな形なのかもどんな味なのかも知ることはなく、ただの甘い液体となり、排水溝の中へと消えていった。


その後、いつものように佐山に無理やり行為を強要された後、佐山が眠ったのを確認して俺は声を殺して泣いた。


俺の心は折れかけていた。


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