憂と聖と過去と未来 5-7
「ね、わかったでしょ?」
「……」
そう言って笑顔を見せる佐山は本当に綺麗なのに…
「じゃあまずは、私のことは怜って呼んでね。私は聖くんって呼ぶから」
「…」
「次に、明日からは毎日私と登下校して、一緒にお昼を食べる。お弁当は私が作るから」
「……それは無理だ」
俺は憂と約束した。毎日登下校するって。
「…いいの?」
佐山はきょとんとした顔で俺は見る。
なんてやつだ…
完全に俺は佐山の言いなりか…
「…わかった」
「あと、はいこれ」
佐山はテーブルの上に置いてあった携帯を俺に差し出した。
「…なんだこれ」
「聖くんの携帯」
「…なにを言ってる」
「わからないの?今日からはこの携帯を使うこと」
「……」
「使ってる携帯はあたしが預かるから」
馬鹿げている。
だが、やはり断れば…憂が…
「…わかった」
俺は上着のポケットから携帯を取り出して渡した。
「すぐにキレるかと思ったけど、そこまで柊さんが大切?」
「……」
クスクスと笑う佐山の顔を見ると、女とはいえぶん殴ってやろうという気持ちになる。
「悔しいけれど、まあいいわ。今はそうでも、すぐに私の虜にしてあげる」
佐山はそう言うと、俺に飛びついてきた。
突然のことで、俺はそのまま後ろにあったベッドに押し倒される。
「……やめろ」
「ふふ…」
佐山は無理やり俺の両頬を掴み、何度もキスをしてくる。
激しいキスだったが、俺には嫌悪感しかなく、何より我慢の限界だった。
「やめろ!」
俺は力ずくで佐山の両手首を掴む。
そして、手首を見て驚愕してしまった。
「……ふふ、どうしたの?」
佐山の手首には、リストカットの傷跡。
それも一つや二つではなく、無数に。
「……」
つい力が抜けると、それからは佐山のしたいように事が進んだ。
俺は……
どうしたらいい…?
憂……