憂と聖と過去と未来 5-2
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「聖、今日はお昼一緒に食べない?」
翌朝、開口一番、憂がそんなことを言いだした。
昼飯を一緒にするのは久しぶりだ。
憂の弁当はうまいので、俺は二つ返事で了解した。
クラスが別れたから、登下校以外はあまり関われないかと思ったが、憂なりに考えているようだ。
少しだけうれしくなって、昼休みを待つことにした。
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俺はチャイムと同時に売店へ向かった。
すでに生徒でごった返していたが、俺の目的は売店の自販機にしかないパック牛乳なのでそちらに用はない。
隣の自販機で緑茶を買って、憂との待ち合わせ場所である中庭へ向かった。
憂に緑茶を渡した引き換えに弁当箱を受けとる。
ちょっとばかし量は少ないが、実に色とりどりでこだわっている憂の弁当は本当にうまい。
俺は内心わくわくしながら弁当箱を開けて食べ始めた。
しばらく無言の時間が続いたため、つい黙々と食べてしまい気付けば弁当箱は空だった。
ちらりと憂の顔を覗くと、弁当にほとんど手をつけず、俯いていた。
どうやら俺の勘違いだった。
憂はなにか話があるのだ。
昨日の電話のこともあったので、さすがに気付いてしまった。
…しょうがない。
言いにくいようだし、こちらから振ってやるか。
「憂」
「へ?」
憂はひどく驚いて、俺の顔と空になった弁当箱を交互に見た。
「なにか用があるんだろう」
「……」
「…昨日からおかしいからな。言えよ」
憂は少し考えた素振りを見せたが、ようやく切り出した。
「…あのさ」
「……ああ」
「聖のこと、好きな人がいるんだ」
「……」
ドクン
激しく胸が高鳴った。
まさか憂、俺に告白か…?
予想外の展開にたじろいてしまう。
「うちのクラスの佐山さんって人なんだけど」
「……」
頭の上にはクエスチョンマーク。
しかしすぐに気付く。
…しまった。俺の早とちりかよ…
「なんかいつの間にか仲介役なんて引き受けちゃってさ…」
顔が赤くなるのをごまかすために冷めた態度をとる。
「…だから悩んでたんだな」
「…うん」
まず、佐山が誰だかわからない。
それと…憂はそれでいいのか?
憂の気持ちが途端にわからなくなる。