憂と聖と過去と未来 5-14
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学園祭が終わった頃、佐山は合格通知書を手にしていた。
おそらく、憂も結果が出ているはず。
……気になる。
そしてできれば、受かっていてほしい。
しばらくそんなことを考えていると、ある作戦を思いついた。
俺は携帯を取り上げられているものの、普段は佐山の部屋にあって充電もされている。
何故かというと、俺の友達からの連絡を確認するため。
佐山は憂にだけ厳しいようで、さすがにそこまで鬼ではないらしく、チェックはさせてもらえる。
ただ、一日数分、しかも見張りつきだが。
だが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
監視下の中で着信がある振りをして憂の番号を見てその場で覚える。
そのチャンスはすぐにやってきた。
「聖くん、はい、携帯」
「…ああ」
携帯を受け取り、開く。
メールが六件、着信一件。
よし、これで怪しまれずに着信履歴を開ける。
相手に感謝しつつ、まずメールを見て返信をする。
その間も佐山の視線は携帯のディスプレイ。
そして、着信履歴を開く。
友人の番号が一番上に表示されている。
「…あれ、あいつが最後にかけてきたのっていつだったっけ」
我ながら白々しいと思うが下キーを押して着信履歴を流していく。
佐山が怪しんでいる素振りはない。
そして、憂の番号がきた。
とっさに集中して番号を覚える。
だが、ここで焦って手を止めればばれる。
俺はそのまま下キーを押し続けた。
その間に憂の番号がいくつか出てきて確認は取れた。
あとは、番号を忘れずに頭の中で何度も読み返す。
「…1ヶ月前か」
俺はそれだけ言って、佐山に携帯を返した。
よし、成功だ。
あとは帰るまで忘れなければいい。