プラトニックラブ3-4
彼女の横顔を見ながら俺は数日前初めて彼女を見たときのことを思い出した。
エレベーターで彼女を見たとき、すぐにあの夜見た女(ヒト)だってわかった。
彼女は俺の視線に気付いたのか、不審な目で俺を見ている。
「なに…?」
「いや、綺麗だなーって思って」
彼女はまたもや呆れた顔をして立ち上がった。
「お世辞はいいのよ。私もう行くわね。貴方も学校行かなきゃだめよ」
そう言ってOLにしては高めのヒールを鳴らしながら足早に去っていった。
彼女がいった後、驚くほどに店は静かだった。
見渡すと店にいる客は俺と中年のサラリーマンだけだ。
そういえば駅のすぐ側に人気のカフェがあったな。
カップの中に残ったカプチーノをぼんやり眺めながら思い出した。
何故、彼女がこの店を選ぶのか少しわかる気がした。
たぶん
彼女は不倫している
カップに残っていたカプチーノの一気に飲み干し、俺は店から出た。
ラッシュの時間は過ぎていて、混むこともなく店の外は落ち着いていた。
それでも俺は帰ることにした。
口の中はひどく甘く、まるで砂糖を舐めたようだった。