上を向いて-1
『たとえば空が蒼いとして、雲が白いとしましょう。
太陽は赤くて、木々は緑です。
信じがたいですが、海は空と同じ色になりますね。』
遠い昔、一冊の奇妙な小説が出版されました。
それが空前の大ブームを巻き起こしています。
『太陽が東から昇る』だとか『台風は西から北上する』だとか、奇妙な内容だらけの本でしたが、人々はみな、こぞって読み耽りました。
数十世紀の時が過ぎ、文明の綻びにより媒体だった『紙』は亡くなってしまいました…―。
―しかしその物語は『常識』として
今もなお、親から子へ語り継がれることとなりましたとさ
おしまい