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『六月の或る日に。』
【悲恋 恋愛小説】

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『六月の或る日に。2』-3

「最後なんだから。」

言いたくもない言葉を、笑顔で口にした。まだ受け止めきれていないはずなのに、言葉にするのはいとも容易かった。

夏樹は、少しだけ、傷ついたように笑った。
なんで夏樹がそんな顔をするのか、あたしにはわからなかった。

「最後に、最高の思い出作ろう!」

続けて、そう言った。


最後はずっと、笑っていよう。
だってもう二度と、君を笑顔にすることは、あたしには出来ないんだから。

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー


『俺が王子!?』
『あたしが姫!?』

二人の驚きの声が、同時に上がった。

もう陽も暮れ始めた梅雨明けの頃。あたしたち演劇部部員は、秋に行う大学祭の催しを決めていた。その名の通り、演劇部だから劇をやるわけだ。

うちの大学の演劇部は、これでも結構有名な方で、著名な舞台俳優や女優なんかも輩出している。

あたしは特に女優志望とかゆうわけじゃなかったけれど、好きな俳優がこの演劇部を出てると知って、ミーハー根性に身を任せて入ってしまった。

『え、でもいいんすか…?自分らまだ2年すよ?』

夏樹が戸惑った様子で、脚本を担当する3年の小山先輩と配役担当の部長に尋ねた。

通常、秋の大学祭は、うちの演劇部にとっては、受験生やお忍びで来ていたりする有名プロデューサーやスカウトマンに、自分たちを売る絶好の機会だ。

だからそうゆう機会は、大抵女優・俳優志望の仲間たちや、先輩方そして今年卒業する4年生に花を持たせるのが流儀って感じで、まさか自分たちみたいないわゆる『ノリ』で入った部員に、劇の主役を任せるというのは到底理解不能だった。


しかし。


『うん、いーのいーの。』

小山先輩と部長は、あたしたちの予想に大きく反してニコニコ顔で頷いた。

『え、でも……ほかのみんなは…。』

あたしが夏樹に続くようにして、戸惑いがちに声を出すと、ほかのみんなも相違ないふうに頷いた。

だから、あたしと夏樹は、二人して目を見合わせて、首を傾げるばかりだった。


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