投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『六月の或る日に。』
【悲恋 恋愛小説】

『六月の或る日に。』の最初へ 『六月の或る日に。』 13 『六月の或る日に。』 15 『六月の或る日に。』の最後へ

『六月の或る日に。2』-2

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー


『同じ学年だよね?あ、俺夏樹っていうんだ。季節の夏に、樹木の樹で夏樹。なんかさ、春美の季節の春って漢字!春と夏で、仲良くなれそうじゃね?』


……………ナンパ?


第二印象は、そんな感じ。

それは、サークルの新歓の飲み会でのことだった。


とにかく、あたしにとっては初対面の相手で、夏樹の名前なんか言われなかったら知りもしないし、なんであたしの名前知ってんの?って感じで、なのに最初から隣でガンガンマシンガントークかまされて、最終的な印象は、最悪ってとこに落ち着いた。

だから、まさかそんな相手が、将来自分の恋人になるとは思ってもいなかったわけで。


けど夏樹は、最初からあたしを『狙っていた』らしい。


あとで聞いた話なんだけど。


*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー


「わぁー、変わってないね!」

「ああ、ほんと変わってねーな。」

社会人の二人が、わざわざ平日に休みを取ってやってきたのは、昔一緒に学んだ大学だった。
その広い大学の中の、小さな一角。部屋のドアにはってある古びたプレートには『演劇部』とある。

「……あ、ねえ、これっ!」

あたしはその中で見つけた『それ』を手に取った。

「んー?……ああ、これか。」

部屋の中を見回していた夏樹はその小さなB5版の冊子に目を向けた後、納得したように笑った。

「懐かしいねー。」

「ああ、俺らの思い出の…」

夏樹はそこまで言いかけて、止めた。言いたいことも、止めた理由もわかっていたから、あたしは少しつらかったけど、夏樹に続けるようにして代わりに言った。

「あたしたちの、キューピッドだったよね。」


夏樹はあたしの言葉に、意外そうに目を見開いた。言っていいの?そんな風に。

そんなに気を使わなくてもいいのに。
あたしはまだ、二人の思い出に浸っていたいのに。

「ねぇ夏樹、あたしに気使ったりしないで?」

そう言うと夏樹は、気まずそうに目を伏せた。それがまた、あたしを少し悲しくさせる。

けれど。


『六月の或る日に。』の最初へ 『六月の或る日に。』 13 『六月の或る日に。』 15 『六月の或る日に。』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前