『六月の或る日に。2』-13
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まだ、週1くらいでデートをしていた頃、夏樹は毎回、あたしを抱いた。優しくも、荒々しく、何かをぶつけるように、あたしを抱いた。
別に嫌じゃなかった。
それで夏樹が、あたしの存在を感じられるなら。
あたしが夏樹の存在を感じられるなら。
二人の距離を埋める方法が、これしかないのなら。
これで、分裂していく何かをつなぎ止められるなら。
それで、良かった。
『…抱いてると、安心するんだ。……春美は、俺のもんだってわかるから。』
ある日、行為が終わった後、夏樹はふとそう口にした。
『…あたしは、夏樹のものだよ?』
何だか不安になって、そう返した。
『…うん、わかってる。』
そしたら夏樹は、愛おしそうに、目を細めて笑ってくれたんだ。
この頃からあった。
胸を巣くう寂しさは。
愛しているのに、埋められない哀しさが。