エンジェル・ダストLast-1
「やっと会えたな…」
薄暗い照明に映し出された白い顔。2人を見つめる双眸には、何の装いも無い。
佐藤と田中は、動揺と畏怖の混じった顔で恭一の姿を凝視する。
「貴様…死んだはずじゃ…」
田中の声は、明らかに怯えている。対して恭一は、ゆったりとした仕草で傍らのイスに腰を降ろすと2人を見上げた。
「残念だったな…」
口許に冷たい笑みが浮んでいる。
「おまえ達にゃ訊きたいことが山ほどあるんだ。しっかり答えてもらうぜ」
ケモノが獲物を捉えるように、目だけが異様に輝いた。
「クッ!」
その時、佐藤は胸元に隠してあったナイフを抜いた。
「喋るなんて思うなよッ」
ナイフを右手で握り、恭一目がけて突いた。切先が迫り来る。
恭一は佐藤の動きを見極めながら、寸前のところでナイフを避けると、イスから立って左足を前に出し半身に構える。
「貴様にやられる前に、こっちからやってやるッ!」
佐藤は、続けざまにナイフを突き出す。恭一はそのひとつ々をかわしながら、相手の隙を待った。
「クソッ!」
攻撃を外されて焦る佐藤。力みが生じ、動きが大きくなった。
その瞬間、恭一はカウンター気味に回し蹴りを伸びきったひじに叩き込んだ。
「グアッ!」
──グシャッ─という鈍い音がした。つま先が刺さり、佐藤のひじは完全に砕かれていた。
「がああッ!」
左手で右ひじを支える佐藤。その顔は痛みに歪んでいる。
そんな相棒を見て、田中はただ、怯えた顔でやりとりを見つめるだけだ。
「ああ、そうだった」
恭一は、ジャケットの内側からジグザウエルを取り出すと、
「どちらも情報は知ってるんだ。2人も要らなかったな」
まるで、料理でもチョイスするような陽気な口調で銃口を佐藤に向けた。
「待てッ!待ってくれ!」
恐怖に佐藤は目を大きく剥いた。
そんな無様な表情に、恭一は冷酷な笑みを向けた。
「死んでいったモノに詫びるんだな…」
乾いた発射音とともに、佐藤の身体はふっ飛んだ。
右のこめかみから入った弾丸は、脳のほとんどを破壊して左のこめかみに拳大の穴を開けて貫通した。