エンジェル・ダストLast-3
すると、
「…ぼ、防衛省…特別情報部…特殊作戦課…」
我慢できなくなって田中が遂に喋った。が、聞いた恭一にすれば初めて聞く部署だ。
「その、防衛省特別情報部とはどんな位置付けをされていたんだ?」
そして沈黙の後、田中は再び口を開く。
「…他国…の軍事的情報収集…それから…各自衛隊が導入した装備の極秘情報…開発中の兵器を…他国から奪われないように…」
「それは、ペンタゴンでいうDIA──国防情報部─のようなものか?」
田中は恭一の質問に大きく頷く。
「…オレ達は連係していた…オフトマンと…」
──オフトマン…おそらくDIAの担当官だろう。
恭一は質問を続ける。
「で?おまえの上官は誰なんだ」
質問された田中は、再び長い沈黙をみせた。恭一は何度も説得するが、なかなか喋らない。
──チオペ〇タールの量を増やすか…。
そう思い掛けた時、田中の口が開いた。
「……な…中西…幸一…」
──なるほど。アイツか…。
恭一は記憶の糸をたぐった。
中西幸一は、旧防衛庁時代から名の知られた男だった。
キャリア組の中でメキメキと頭角を表し、30代で局長になると40歳で現在の要職に就いた。
極端なタカ派で、98年、北朝鮮から発射されたテポドンが、日本上空を通過して小笠原諸島付近に落下した事件の時など、中西は日本への核装備と当時アメリカで開発されたMD──ミサイル防衛─の重要性を、時の長官に進言したほどだ。
故に自衛隊の幕僚クラスからは絶大な信頼を寄せている。
「…まったく。おまえ等といい中西といい、防衛省は変態の集まりか」
1時間後、恭一は田中の口から、オペレーションの全貌を聞き出していた。