遠恋ーえんれんー泪side2-4
「ゆたしくうにげーさびら。」
沖縄語で「よろしくお願いします」と言って、深く頭を下げる。
ひたすら舞う、舞う、舞う。
舞ってる間は余計なことを考えないですむ。
落ちる汗に比例して皆の熱気が高まっていく。
「‥にふぇーでーびたん(ありがとうございました)。」
1時間の公演を無事に終えた。
息が切れてまともに喋れない。
失敗は一回だけ、舞扇を落としてしまった。
けれど完成度は高かった‥はず。
「泪君、お疲れ様。とっても素敵だったわ。」
「歌樹ちゃん‥!ありがとー。」
歌樹ちゃんがニコニコ笑いながら歩いてくる。
僕も釣られてニコニコ笑う。
かっこいい顔なんかできない。
会えて嬉しくておもいっきり笑顔になってしまう。
「舞台でのかっこいい貴方も素敵だけど、普段のホワホワした貴方の方が私は好きよ。」
「ホワホワって‥してないよー。」
「そうゆうとこがホワホワしてるって言ってるのよ。」
うふふっと可愛く笑う歌樹ちゃん。
いつも二人でお話をするテラスに向かって、ゆっくりと歩き始める。
「今日はたくさん話すことがありそうね。」
「えっ‥?」
「泪君、何かあったんでしょ?顔でわかるわ。」
「‥ホント‥歌樹ちゃんには隠せないなぁ‥」
「ふふっ‥。話してくれるかしら?もしかしたらだけど、力になれるかもしれないわ。」
ねっ?と、優しく微笑む歌樹ちゃんを見てると、なんだか本当に解決しそうな気がしてくる。
「あの‥ね。前に話した恋人‥美音のことなんだけど。」
「美音ちゃんね。覚えているわ。」
「その‥美音に対して、僕が素直になれなくて。とゆうかお互い素直になれなくて。」
「なんだか不思議ね。貴方、素直になれないことは素直に言えるのね。」
確かに。
素直になれないことは自分でも理解してて、他の人に「自分は素直になれない」と素直に相談している。
矛盾してるなぁ、自分。
「僕はきっと‥ううん、絶対に怖がってるんです。」
「何を?」
「彼女に嫌われてしまうこと。どうしようもなく怖いんです。だから素直に好きだって言えないんです。」
「‥おバカさんね。」
歌樹ちゃんが僕の頭をコツンと殴る。