魔性の仔C-9
「仕方ないわ。先にゴハンを食べてましょう」
真弥は、中尊寺の言葉を待ちかねたように手を振った。──お腹が空き過ぎていたのだろう。
「じゃあ、すぐに準備するから」
中尊寺は下ごしらえを終えていた料理に取り掛った。
ニワトリの香草焼きにコールスロー。
香草は、最近流行しているハーブソルトを用いた料理だ。
2人はテーブルに腰掛け、にこやかな表情を交して食事を摂る。
と、その時だ。入口のノッカーが慌ただしく鳴った。
「誰…かしら?今じぶん」
中尊寺は席を立って入口へと近づいた。が、真弥は何か──ドアの向こうに感じとった。
「うあッ…あ!」
蒼醒めた顔でダイニングから逃げ出した。
もちろん、中尊寺は気づいていない。
「どなたです?」
迷惑そうな云い回し。だが、相手は予期していたように快活な声で答えた。
「夜分にすいません。講文社の者です。刈谷さんから伝言を預かってまいりました」
「伝言…?」
──刈谷─の言葉に、中尊寺はドアを開けてしまった。
その途端、10人近い男達が分け入った。
「いやあああぁぁーーッ!」
中尊寺の悲鳴が辺りに響いた。が、1回切りですぐに静寂がおとずれた。
…「魔性の仔」?完…