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エイプリル・マジック
【青春 恋愛小説】

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エイプリル・マジック-1

ねぇ、覚えてる?
そう。始めて一緒にランチした日。
午後から、予備校の仲のいいグループで遊ぼうって。
でも、午前暇だなぁってあたしが言ったら、じゃあ、お昼一緒に食べようよって。
免許とりたて、若葉マークの車で迎えに来てくれたんだよ。
「助手席に人乗せるの初めてなんだよ。涼子は練習台な」
って。
「やだ、練習台は透んちのネコでも乗せてよ」
なんて言ったけど。
軽で、ちょっと堅めのシートだけど。
運転に一生懸命で会話になってなかったけど。
やっぱりチャリのが良いって言ってたけど。
でも特等席だった。


「ここがうまいんだよ」
って。入ったのはお蕎麦屋さん。
あたしは美味しいものに目が無いの知ってるからって。一緒に大盛り頼んでくれちゃって。
がんばって食べたけど、ほんとは苦しかったんだから。
覚えてるのは、お蕎麦の味よりも向かいにあった顔だけ。


午後みんなが集まって。桜がきれいだから、花見に行こう!ってなったけど。
お花見は、狭いスペースしか無かったから。5人で行ったのに小さいシート敷いて。
狭いから向かい合わせにはなれなくて。
隣には友達。
後ろには透がいたの。
寄っかかりあった背中がなんだか熱くて。
照れ隠しで
「重い〜っ」
って言ったけど。
「俺の方が重いんだけど」
っていいながら寄っかかってきたよね。
預けられた背中、だけどあたしが包まれてるみたい。

みんなで、舞い散ってる花びらに手を伸ばして。捕まえた花びらを、そっと後ろに降らせてくれたっけ。
淡いピンクのハート。
うれしかったんだよ、大事にとっておきたいぐらい。
手にのせたら溶けちゃいそうな花びらだけど。


お花見が終わって。
大学生になって、バラバラの生活が始まって。遠くへ行っちゃうけど。
でも、その後もずっと側に感じてたかったのに。
なんだか、素っ気ない。
あの日のことは溶けて消えちゃったみたい。
あの日は、4月1日だったから?
1日だけ、切ないウソをくれたの?

期待したくないのに。
あたしが友達だから近くにいられるのはわかってるのに。
気持ち、止めれないんですけど。

来年の4月1日。
彼女ができてるかもしれない。
でも、エイプリルフールだから。みんなと一緒でもいいから。
また迎えに来てね。


でもやっぱり。
あたしは1年も待てないから。
だから、今度帰って来るときはちゃんと連絡してね。夏でも、冬でも。
お願い。
約束だよ。


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