想-white&black-E-6
「あははっ。何だよ、バレてたのか」
「麻斗、さん?」
「よっ。さっきはど―も」
またもや突然現れた彼は先程のことなどまるで気にしている様子もなく明るくそう言われたが、この状況に私は気まずくて仕方がない。
すぐに視線を違う方向に逸らした。
麻斗さんはドサッと無造作に楓さんの向かいのソファに腰かける。
「お前、何考えてるんだよ。この女は俺のだって知ってるんだろ」
「そりゃあ知ってるさ。花音に初めて会った日、あんな姿見せられちゃ誰だってどういう関係か分かるに決まってるし」
「ならこれに手を出すのは止めてもらおうか。事と次第によっては悪ふざけでしたではすまさんぞ」
鋭い双眸で睨みつける楓さんと、それとは対照的にあくまでも楽しんでいる様子の麻斗さん。
この部屋の空気は麻斗さんが現れたことによって、更に糸を限界まで張りつめたような緊張感で満ち溢れていた。
一体この2人はどういう関係なのか。
親しい口振りから仲が良さそうかと思えば一瞬で敵対心を剥き出しにする。
楓さんに出会って間もないが、彼に対して堂々としている人を初めて見たことも疑問に思う要因の一つだ。
麻斗さんは本当に一体何者なんだろう。
「とは言え楓、お前彼女と付き合ってるわけじゃないんだろ?」
「お前には関係ない」
楓さんは速攻で切り捨てたが麻斗さんは気にする様子もない。
「見れば分かるって。花音が楓に対する態度を見てればな。付き合ってるって感じじゃないし、何より楓が誰か一人と付き合うなんて思えないしね」
麻斗さんは意味ありげに笑みを浮かべる。
それを見た楓さんの不機嫌さは明らかに増してしまっている。
私は不穏な空気に堪えきれず思わず口を開いていた。
「あ、あの……っ」
「何だ」
「何?」
2人が同時にこちらを向く。
その表情はまるで正反対だったが……。
(楓さんってばそんなに睨まなくてもいいのに……)
「えっと、楓さんと麻斗さんは、その、一体どういう……」
私が恐る恐る尋ねると楓さんはめんどくさそうに深く溜め息をつき、反対に麻斗さんは機嫌よさげににっこり笑った。