想-white&black-E-3
「間宮さんっ、どうして英さんと知り合いなの?」
「お願い、教えてもらえない?」
美しく施されたヘアメイクやキラキラ光るネイルをしているクラスの女の子達は、何でそこまでと思えるほど必死だ。
それと同時に英楓という人物がどれだけ周りに注目されている存在なのかを思い知ったような気がする。
「あの……、それは……」
熱気に圧倒されかけていた私には上手い嘘も思いつかず、ますます頭の中は真っ白になっていく。
(まさか本当のこと言える訳がない。……都合のいい時に遊ばれる玩具だなんて……)
そんなことを言ったら自分が惨めになるだけだ。
それにこの様子じゃきっと本当のことを言ったところで信じてなどもらえないだろう。
悔しさに唇を噛み締めながら言葉に詰まっていると、後ろから低めの甘く艶っぽい声が響いた。
「花音は楓の遠い親戚だよ」
そこまで大きな声ではなかったのにあれだけ騒がしかった教室によく通る声だった。
一瞬で先程までの喧騒は静寂を取り戻す。
一体誰の声なのかと振り向くが人だかりで姿は全く見ることができない。
……だけど声は聞いたことがある。
その時静けさを取り戻していた教室は急に悲鳴にも似た歓声で溢れかえった。
「きゃあっ!! 結城さんっ」
「どうしてここにいらっしゃるのっ?」
「うわっ、俺間近で見るの初めてだよ」
「結城麻斗さんよ!!」
教室にいる人達の興奮がまた高ぶりを取り戻していく。
結城麻斗……さん。
「あっ」
聞き覚えのある名前に私は小さく叫んだ。
あの日、私が楓さんの屋敷に来た翌日の朝方、あそこから逃げ出そうとしたところに現れた男。
私の目の前にできていた人の壁が道を作るように左右に開けていく。
そしてその道の中央を歩いてきたのは、やはり透けるような金色の髪が綺麗なあの男の人だった。
「久しぶり、花音」
「……結城、さん?」
「おいおい、麻斗って呼んでくれって言っただろ? 俺達もう知らない仲じゃねえんだし」
形のいい唇をニヤリと歪ませ、あと数センチで触れてしまいそうな程顔を近付けてくると、わざと囁くようにそんなセリフを口にする。