想-white&black-E-2
二十代後半ほどの若い男の担任の先生に紹介された私にクラス中の視線が注がれている。
朝の騒動は一斉に学校中に噂となって駆け巡り、当然私は注目の的となってしまっている、らしい……。
何が何だか分からないままここに放り込まれどうしたらいいのか分からない。
一通りの自己紹介を終え、指定された席につくと周りの子達がこちらを見ながらヒソヒソと話している姿が目に入る。
「……………」
話している内容までははっきりと聞き取れないが、自分が注目を集めてしまっている時点でこの場にいづらいのだ。
これから先が思いやられ、不安を覚えずにはいられなかった。
(……嫌だな。)
前の学校に戻りたい。
あそこには友達もたくさんいたし、思い出も詰まってる。
平凡でいいから普通にみんなと笑って過ごしたかった。
以前通っていた高校は英の家からは遠すぎて通えなかった。
それも鳳条へ転校することになった理由の一つだったのだ。
(でも……あの街にはパパやママの思い出もありすぎて今はまだ辛いかもしれない。)
あの家にいたままだったら私は今より立ち直ることはできなかったかもしれない。
だがこれから先両親を亡くした辛さや悲しさが時間と共に癒されていく日が来るのか、今の私には分からなかった。
私は本当に生き残ってて良かったのだろうか……?
「……さん……、間宮さんってば」
「えっ?」
いつの間にか考え事をしてしまっていた私に誰かが声をかけてきたらしい。
顔を上げると机を取り囲むようにクラス中のみんなが私の周りに群がっていた。
いつの間にかHRも終わっていたようだった。
「ねえねえ、間宮さんって英楓さんと一緒に登校してきたって本当?」
「あ、私見たわ」
「英さんとはどういう関係なの?」
矢継ぎ早に質問を浴びせられ、好奇の視線がこちらに集中している。
「えっと……、その……何て言うか」
私は何て答えたらいいのか困ってしまった。
実際私と楓さんはどういう関係なのかよく分からないのだから。
だが周りはしどろもどろな私にお構い無く話しかけ続けてくる。
周囲はだんだん興奮を増し始め逃げ出そうにも囲まれていて抜け出せそうにもない。