loopV-4
「遥は目立たないからね。」
「いや、目立つだろー。俺、大学のカフェで1人でいるのよく見るよ。」
「ほんと、祐介は詳しいなぁ。」
あたしはなんだか言いようのない、暗澹たる気持ちになった。
祐介と由紀の会話も、まるで遠くの方に聞こえる。
目の前の、いつも楽しみにしていた鍋料理にも、急に食欲が失せてしまった。
「――睦月、どうかした?」
顔をあげると、怪訝そうにした2人の顔がそこにあった。
あたしは慌て取り繕う。
「お豆腐が予想以上に熱くって。」
取ってつけたようなセリフだけれど、そんなあたしに由紀はふわりと笑う。
とても優しく。
胸が締め付けられるようにきゅっとなり、嬉しいような、苦いようなそんな気分に、やっぱり苦しい気持ちになる。
気づいてはならない。
あたしは守らないといけないのだ。
この空気を。
一番にそれをのぞんでいるのは、あたしなのだから。
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『男と女の間に友情は存在するのか。』
そんな陳腐な質問はやめてほしいとつくづく思う。
祐介や由紀と三人でいると、否応なく聞かれるので、いつも困る。
あたしは『する』と思う。
現にあたし達三人は高校生の時からそうだったわけだし、そもそもそんな『するか、しないか』なんて極端な選択なんてないだろうと思う。
ただ、とあたしはそこで思う。
ただ、脆いのだ。
恐ろしいほどに、驚くべきことに、脆く簡単にそれは壊れてしまう。
由紀と祐介と三人でいる時、自分はなんてリラックスしていられるんだろうという事に、とても満足していたし、その空気を壊したくないことは、今でも願っていることだ。
ただちょっとした、ほんの会話の弾みで、それはグラグラと音を立てるかのように、急にバランスを崩してしまった。
ずっしりと、決して揺るぎないものだと思っていたのだけれど。