エリザベス・悲劇の人形たちY-2
「調子はどう?」
「うん…」
頭押さえるマルセル。
倒れた時の事は…
ハッキリとは覚えてなく、どんな状況だったか分からない。
シェリーが説明する。
「アンタが倒れた時の状況は既に把握しているわよ」
「把握してる?」
「グロリアスの知り合いの聖導士さんが、アンタの魂から霊査で伺っているから。倒れる直前まで、エリザベスにコキ使われていたって言うんじゃない」
「…」
コキ使われた。
うーん…
覚えてないわ。
でもこの1年ぐらい…
エリザベスは何だか、活発になって来ているのは思い違いだろうか?
それまではとても大人しかったのが…
子供人形たちがウチへ来た時からよく喋るようになった。
母親としての自覚に目覚めたのかもしれない。
でも、それだけじゃないような気がする。
やたら、太々しい態度が目に付くし、私に色々と指図して来たりする。
あの人形はいったい…
「エリザベスって人形が、よく…分からないわ」
「え?」と、マルセルに注目するシェリー。
珍しい。
エリザベスを溺愛するマルセルが、初めて疑問の言葉を口にするとは意外である。
「何だか本当のあのコを見せられたみたいで、凄く怖くてが何を考えているのか、こっちは理解出来ないの」
「エリザベス人形の出世についてなら、教えてもイイわよ?」
「今更、教えてなくても…私は知っているけど」
「マルセルが知ってる事、聞かせてくれない?」
「ええっと…」
シェリーに促されて、マルセルはエリザベスの生い立ちについて、語り始めた。
エリザベス人形は今から数百年前(実は作られた年代がハッキリしていない)から存在していた古い動くアンティークドールである。
当時、フリーラムランドに国一番と言われる大富豪の男がいた。