『堕胎』-2
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気がついたら自分の部屋に居た。
どうやって学校から帰ってきたのか覚えてない。
ただ、ずっと私を呼ぶ声が聴こえる。
“おかあさん”
“おかあさん”
“おかあさん”
一度でも思い出すことがあっただろうか。
ごめんね。と心から悔いた事があっただろうか。
手足をもぎとり、命を奪っておいて、私は…
突然、喉の奥が熱くなり嗚咽と共に胃の中の物を吐き出した。
それでもなお、私の体は総てを出し尽くすかのように嘔吐を続けた。
涙が出て、息が上手く吸えない。
苦しくて苦しくて死にそうになる。
でも、赤ちゃんは?
誰にも愛されず、忘れられて、暖かい腕に抱かれる事なくバラバラになって。
苦しくて。怖くて。痛くて。
「…ご…め…」
私に殺された赤ちゃん。
「ごめん…ね…」
今更、赤ちゃんに謝ってもどうにもならない。
でも謝らずにはいられなかった。
許されようなんて思わない。
私は許されちゃ駄目なんだ。
もっと苦しんで、苦しんで、苦しみながら死んじゃえばいい。
私は。
私は最低な人間だ。