『It's A Wonderful World 3 』-1
僕は世界のどん底にいた。
どんなに、見苦しくもがいても。
世界は冷たく厳しい。
僕を取り巻く世界はこんなにも狭いのに。
そんな世界にすら僕は相手にされない。
僕はなんて不幸なんだろう。
本当に不幸だ。
そして、かわいそうだ。
ああ、僕って、僕って。
そうだ。
死のう。
「ちょっと、待て!!!!」
いい感じに暗くなっていた僕の部屋に光が差す。
ドアが勢いよく開かれたのだ。
ドアノブに手をかけ、息をついたのは、変な髪形をした男だった。
「なんだ人間拷問器具か…」
「妙なあだ名をつけるな!!」
こんなにも可愛そうな僕。
それなのに、僕の部屋を訪れたのは拷問器具のように尖った髪型をした男だけだった。
ああ、なんて不幸な僕。
そうだ。
死のう。
僕は首に絡まった長タオルに力を入れた。
「待てって! 大体そんなんじゃ死ねないだろ」
「ほうっておいてくれ」
ついさっき。
学校で最悪の事件が起きた。
憧れの仁美さんに襲い掛かった変態。
そんな変態が言った。
―桐山シュンに頼まれてやった。
「……」
どんだけ陰湿なイジメだ!!!!
僕は、反対したのに。
やめろ、お前はバカか? いやバカだろ。
そう言ったのに!!!
あいつは、僕の制止を振り切って特攻して、あろうことか自分の身かわいさに僕を―!
「あんのヤロウうあああううああああああああ!」
「…シュン?」
僕は叫んだ。
あのバカに対する恨みをこめまくって。
「今度、会ったら絶対に復讐してやるからなああああ!!! この僕にケンカ売るなんて、上等すぎるだろうがあああああ!!!!!!」
そうだ、死んでる場合ではない。
あのバカに地獄の苦しみを与えなくては…。
「まず裸にひん剥いて、校門にさらして、ぶっ飛ばして気絶させて、辺りにエロ本を散らばせて、そうだ、仕上げにくしゃくしゃになったティッシュをあちこちに……」
「間違いなくアキヒロが登校拒否になるからやめろ」
「なぜ止める!? お前に僕の気持ちがわかるのか? 仁美さんにアキヒロをけしかけたと思われた僕の気持ちが!?」
アキヒロにあんなことをさせたのは僕だと思われたんだ。
変態を陰で操っていたのは僕だと思われたんだ。
変態を操る。
それは真の変態。
―桐山くんって真の変態だったんだ…。
ああああああああああ。
あの可憐な声でそんなことを言われた日には…。
やっぱり死のう。
僕はバファリンの箱を手にとった。
半分はやさしさで出来ていても、大量に飲めば死ねるんだ。
「だから、待てって!!!」
マサキにバファリンを取り上げられた。
「なにをする…?」
「目を覚ませ、シュン!!」
ばちん。
突然、頬に痛みを感じた。
え、殴られた?
「何いじけてんだよ!」
「マサキ…」
突然叫んだ親友に、階下から母の心配する声が聞こえる。