似た者同士なんだ-1
小さく波がたって、ゆっくりと輪を描く。
お椀に張った水の、底に沈み固まる片栗粉。
作業がてら指で軽く混ぜて遊んでいた。
ただの水よりも滑らかさを得たそれは、少しあたしの指に付きまとった、ような気がした。
あたしのも、こんなんなのかな…?
「どうしたの…?」
「…ううん、何でもない」
一緒に餃子を包んでいた和希が、不思議そうに微笑んだ。
あたしと同じ顔のこの兄は、あたしと同じ年のくせして大人びている。
和希がお椀の水に指をつけた。
指先を良く湿らす為に、念入りに水を掻き回す。
一瞬、あたしののように見えた水。
でも、瞬きしたら、ただの水に戻った。
顔が熱い。
自然と内腿に力が入った。
夕食時に和希が火を加えた餃子は、一口サイズの円錐になった。
そして、あたしがそれを食べていたとき、和希はどうしてか前屈みになっていた。
「どうしたの…?」
「…ううん、何でもない」
熱を帯びた瞳で見詰められて、あたしの顔はまた熱くなる。
「早く食べなよ…」
「…うん」
さすがにあたしが大皿に乗った餃子のぜんぶを、取り皿に移そうとしたら焦りだした。
『―…し?…もしもーし?』
電話からお母さんの声が聞こえる。
遥か遠くからの囁き声に感じる留守電は、実はすぐ近くからだった。
声を出さなければ『手ぶらフォン』は起動しない…
思うとなおさら声を圧し殺した。
「……」
胸元にいる和希の、こっちに寄越した目線が鋭い。
和希が眉を潜めて、ムキになる。
「―…っ!」
さっきより力が込められ、さらに甘噛みときた。
あたしの肺は大量の空気を求める。
鼻から抜けるにも、量が多すぎて声が出てしまいそう。
お母さん、早く電話切って!
そう思ったが早いか、日課の留守電録音が終わる。