Switch-1
今から15年前…
住宅街の中にある小さな公園。
その中にあるジャングルジムを5歳ぐらいの男の子が勢いよく登って行く…
頂上に着いた男の子は嬉しそうに近くで見守る母親に向かって元気良く両手を振った。
「ママー!てっぺんまで登れたよ!手離しても全然平気なんだよ」
自慢げに笑っていた男の子顔は一瞬で凍りついた
「危ない!!」
母親の悲鳴と同時に男の子の体は真っ逆さまに地上へと落ちて行った…
それから15年…
俺は大学生になった。
丸山遊(まるやまゆう)20歳。
頭を打つことも骨を折りもしなかったが腰を強打し裂けたため盛大に出血して泣きわめいたのを覚えている。
今は5センチ程のミミズのような傷が残るだけだがそこだけ皮膚が少し薄く腰をひねると軽くひきつるよな感覚がある。
そんな懐かしい夢を見て目が覚めたのは昨日散々彼女に傷を撫でられたからだろう…
優しいけど小悪魔でいつもどこか妖艶な雰囲気を漂わせている…
でもちょんと尖った牙のような犬歯を覗かせえくぼをつくって笑うとたまらなく可愛い彼女…
怖い記憶のはずなのに何だか温かく優しい気持ちになれるのは彼女がこの傷を好きだと言ってくれるからだろう。
ちびっこ遊ちゃんの冒険の名誉の負傷の跡だねと彼女に微笑まれてから自分でもなんだかそんな気持ちになるから不思議だ。
彼女の事を考えながら時計を見ると午後5時を少し過ぎたとこだった
(やべっ…早く用意しないと遅刻する)
慌てて起き上がり風呂に向かいながら携帯をチェックする
彼女からの連絡は無し。
(はぁ…)
元々メールは淡泊で送れば可愛い絵文字がいっぱいのメールが返ってくるのだが自分からは用事が無ければ連絡して来ない。
付き合って2ヶ月…
アドレスを交換してから数えると半年程…
そろそろ慣れろよと自分でも思うが何だか自分ばかりが好きな気がして寂しいと思わずにはいられない
バイトの時間が迫ってるのを思い出し頭を切り替えてシャワーに入った
服を着替え髪を乾かし軽くセットする
服に合わせてピアスとネックを身につける
鏡で自分をチェックして彼女におはよう。のメールを打ちながらタバコをくわえて家を出た