阿婆擦れ-3
「ゆ、優香。大丈夫か?」
「雄大かて、何時も飲んどろうが。」
「話してなんや?」
「・・・・・・・」
「黙っておっては分からんが。」
「好いた男がおる。」
雄大は飛び上がらんばかりに驚いた。
「ほ、ほんまか?
相手は、男か?女か?」
バシッ! 優香の平手が雄大の頭を叩いた。
「男と言うたやろ。」
「し、しかし・・・・・・・
わははははははは。」
雄大が豪快に笑い出した。
「そうか。優香が色気づいたか。
お前に好きな男がのお。
それにしてもその男は災難やの。
優香。相談なんて必要なかろう。
お前なら男を手篭めにして終いじゃ。」
「雄大!!!!!!!!!
真面目に話しとるんじゃ。
俺を手がぅんやない。」
「わははははは。
すまん。すまん。悪かった。
それにしても、今日はおとなしいの。手が出んかった。
おなごは、おしとやかが一番じゃあ。
それと、俺は止めた方がええぞ。」
「俺がダメなら、何て呼べばええんじゃ。」
「そうじゃのう。
優香に似合うんは、なんじゃろうの?
・・・・・・・」
「分からんのじゃったら、言うんやないが!」
バシッ! 優香の平手が飛ぶ。
「すまん。すまん。悪かった。
ところで相手の男はだれじゃ」
「・・・・・・・」
「今、それを言うても相手にされん・・・・・・」
「花嫁修業に出ようと思う。」
「花嫁修業?」
「そうじゃ。いい女になって帰ってくる。」
「なんじゃあ、そりゃあ?」
「雄大。俺が帰ってくるまで待っとってくれるか?」
「何じゃて?」
「お、お前、まさか・・・・・・・・」
バシ!
「鈍い男じゃあ!」
雄大は、ひっくり返りそうなほど驚いた。
「わ、わしか?」
「そうじゃ。俺の女振り、楽しみに待っとり!」
優香は満面の笑顔で言うと、部屋を出て行った。
雄大は固まったまま、動けなかった。
優香は目鼻立ちのはっきりした顔をしている。化粧を施せば芸能人の間に入っても引けは取らないだろう。喧嘩で引き締まった体に、最近は胸も膨らみ眼のやり場に困るほどでもあった。しかしあの性格が伴うと・・・・・・。
美女だとか可愛いといった言葉から、余りにかけ離れていた。
妹。雄大にとって、優香は手に負えない妹のような存在だった。女として意識していないが、いつも気懸かりな娘だった。好きなのは間違いなかった。竹を割ったような真直ぐな性格とは対照的に、ガサツな言葉使いや態度に隠れている、きめ細かな気遣いや女性らしい思いやりを雄大は知っていた。
しかし、わしのどこを好いとるんじゃろう?
どこまでも鈍い雄大であった。