阿婆擦れ-2
「おう。お前ら。災難じゃったのう。」
「なんじゃい。わりゃあ、何しに来た。」
「そう。尖るなや。侘びに来たんじゃ。優香を許してやってくれんか。」
「何じゃとお。こいつを見てみい。鼻が折れ取るんぞ。
このままで済ませるはずがなかろうが。」
「わかっとる。わかっとるから来とるんじゃ。
しかしな、お前らもどうなんじゃ。
先にチョッカイ出したのはお前らじゃろう。
おなごにチョッカイ出して噛み付かれたからゆうて
仕返しじゃあ格好つかんじゃろうが。」
「雄大。わしらが治めても、もう止まらんぞ。
この学校だけやない、優香を面白く思わん連中は五萬とおるんじゃ。
ここらで片輪になっとく方が、優香のためと違うか?」
「まあ、そう言うな。
優香のことは悪かった。
優香は、わしがおとなしゅうさせる。ほんまじゃあ。
わしに免じて、なんとか治めてくれえや。」
「雄大。お前が、何でそこまでするんじゃ。
優香が調子に乗っとるのは、お前のせいじゃと言うやつもおるが。
お前を狙うとるやつもおるんぞ。
お前こそ、優香に関わっとる場合じゃなかろうが。」
将人の言い分は正しかった。最近の優香は眼に余るものがある。そして、相手は増える一方だった。ここらで優香を止めないことには、雄大も押さえきれなくなる。
「すまん。
ほんに、すまん。
優香のことは、わしが何とかする。
そっちのあにいも、鼻が折れてしもうたんか?
ほんに、すまん。わしが謝る。
治めてくれとは言わん。
この件、わしに預けてくれ。」
これまでは、大抵の諍いは治めることができたし、雄大の顔の広さで後腐れのないよう話をつけていた。しかしそれも限界に来ていた。そんな雄大の苦労を知ってか知らずか、優香は相変わらず暴れ回っていた。そんな優香に雄大は説教すらしなかった。
「雄大。顔貸しな。」
放課後の教室に優香が現れた。今日は野球部の練習は休みだった。
「なんじゃい優香。昼間の事なら気にしとらんぞ。」
「そんなことやない。話しがあるんじゃ。」
校門を出たところで、雄大が話しかけた。
「なんじゃあ、話って、なんか恐ろしいのお。」
「茶化すんやない。話しは雄大の家に着いてからや。」
優香はそれ以降、一言も話さない。
優香は雄大の部屋へ上がりこみ、勝手に冷蔵庫から缶ビールを取り出すと一気に飲み干した。