……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-17
「……我慢、我慢……ンペロ」
筋張った部分をしゅるっと弄られると、淡い快感に誘われてしまいそうになる。しかし、紅葉は唇を離し、名残惜しそうな糸を手繰り切る。
「すっきりしたかも……少しだけね……」
「もう、終り? 終りなの?」
「え? あ、いや、もうちっとあるかも。そうねえ……」
壁の向こうの里美は上を向きながら悩み事を探し始める。不安が渦巻いていたせいか余計な不満が湧いていたが、溜まっていた鬱憤を吐き出したおかげでそれらが霞んでいた。
自分に気を遣ってくれるマネージャー。ざんげ室で罪を告白すると、こういう開放感があるのかもしれない。
ただ、神父が求めていたのは別のもの……。
例えば熟れたイチジクを縦に割ったような、あの甘じょっぱい果肉。今目の前でお尻を突き出してくれる紅葉に対してだったわけで……。
薄い水色のゴムも浅黒い陰茎を包めば見えなくなる。
それでも触感が違うのを彼は知っている。十回に満たないストロークで感じた女性の中。自分の一番敏感な部分で触れ合ったとき、彼の深層心理に女の素晴しさが刻まれた。
女を愛したい。ゴムなど使わずに激しく、直接的に求め、そのまま……。
だが、目の前でお尻を艶かしく振る女子を彼はそこまで好きではない。
「……早く……」
壁に手を着け、爪先で立つ彼女。卑猥な蜜と酸っぱい匂いを醸す彼女の秘裂に中指をいれると、にゅるっと飲み込まれ、デコボコした膣襞に触れる。
ジャージの上を剥ぎ、日に焼けた背中をさする。スベスベした肌はあまり汗をかいておらず、吸い付く感じはしなかった。
「んぅ、焦らさないの……」
この誘惑に耐えられない。彼はその乖離した気持ちを誤魔化すことにした。
「……ん、んぅ……くぅ……っと」
筋肉の張りのあるお尻を掴み、ちょっぴり開く。すでに充分に濡れそぼっていた秘裂は難なく彼のものを飲み込み、たまにひゅぷっと空気の漏れる音がした。
「でね、あたしは絶対入賞するの。そしたらきっと推薦とかもらえるでしょ?」
「う、うん。いい、いいね、すごいいいや……」
ゴム越しにねっとりと絡みつく襞に遊ばれ、今にも射精してしまいそうになる。奥歯を噛み締めてナントカ堪えていると、尿道を走る我慢汁がこそばゆい。
「羨ましい? まあそかもね。君みたいな運動音痴君には縁がないもんね」
「ん、んふ……ぅっ!」
紅葉の口から卑猥な声が漏れる。
「あれ? 今誰かいた?」
「あ、いや、なんでも無い。多分廊下からだよ。なんか誰かケンカしてるみたいだから……」
「そうなんだ。そういえばさ、夏休み中って合宿あるみたいね。しかも男子と一緒だってさ。最悪」
自分語りに夢中な彼女はそこまで気にしない。紀夫は紅葉の口を手で覆いながら繰り返し突き上げる。
「……マネージャー君の、なんかもの足りないな……」
「俺のじゃ……駄目かな……」
彼女の口にたいして彼のはサイズが一回り小さいらしく、大きく動かすとジュプッジュプッと音が立ってしまう。
「君が来てくれるの? そうね、雑用はいくらでもあるだろうし、ごはんのしたくとかあたし駄目だから来てくれたほうが助かるかも……」
「ああ、ううん、いいよ、うん、イク、イクよ……」
紅葉が下腹部を捻ると、こらえ性の無い陰茎はすぐさまそれに煽られる。
全身に快感が広まり、求める姿勢は卓球の前傾姿勢よりもさらに前のめりになり、そのまま壁に手をつける。
収縮を繰り返す陰茎に血液が集まり、爆発寸前の緊張状態を維持するのがやっと。
ここを堪えればもう少し楽しめるはず。その思いが彼を踏みとどまらせる。
「君がいてくれて良かったな。あ、勘違いしないでよ? その、愚痴を吐ける相手がいて楽ってことだからね」
「う、うん……あ、あぁ……そ、だ……ね……」
意地っ張りな里美の強がりを聞いた瞬間、紀夫の気が緩んでしまい、そのまま紅葉の背に倒れこんでしまう。
「わっ、きゃぁ……」
「ん? ん? どうしたの? 大丈夫……」
「な、なんでもないよ、ただ、脚が、もつれちゃって……」
「あそ。まあいいわ。それじゃあ行くね。君も仕事が終わったらちゃんと応援してよ? 絶対に入賞するんだから!」
壁の向こうではきっとガッツポーズをしているであろう里美とは裏腹に、紅葉と紀夫は局部を結合させたまま重なり合い、お互いの体温を感じている。
「うん、がんばってね……」
それだけ答えるのがやっとの紀夫は、身体に襲い掛かる疲労感に抗いながらも起き上がれずにいた。