投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

……タイッ!?
【学園物 官能小説】

……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 50 ……タイッ!? 52 ……タイッ!?の最後へ

……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-15

「そんな、そういうわけじゃなくて、だから……あのさ、えっと……」
 自分はからかわれている。そう確信している紀夫だが、それでも宥めるのは、後でどんな尾ひれをつけられるかが心配だから。今はとにかく彼女の機嫌を損ねぬよう、且つ不埒なマネをしないように気をつけることだ。
「……はぁーあ、やだな。なんかさ……」
「「!?」」
 開いた窓から聞こえてきたのは良く知った声。二人は顔を見合わせて窓の下へと急ぐ。
「なんでこうなっちゃうんだろ。あたしって素直じゃないよね……」
 倉庫の外はグラウンドだが、備品の出入りがあるため応援席と離れており、準備運動なども禁止されている。ある意味内緒話をするにはもってこいな場所だが今は都合が悪い。
「それというのも全部島本が悪いんだから……、なによ、でれでれしちゃってさ……感じ悪い。あたしを守ってくれるんじゃないの?」
 半開きの窓から中を伺うと、体育座りをしながら俯く里美の姿があった。
「……ねえ、外にいるのって里美ちゃん?」
 紀夫は無言で頷く。
「あたし、すごく不安なのにな……」
 切なげに言う里美は腕でゴシゴシと目の辺りを擦る。もしかしたら既に泣いているのかもしれない。
「……あのさ、なんか里美ちゃん落ち込んでるみたいだけど……励ましてあげたら?」
「……でも」
 励ますことに異論は無い。けれどこの状況がばれても困る。青春と性春の二律背反に陥る紀夫はどちらを優先すべきかと悩んでしまう。
「……でもじゃないでしょ。君のすべきことは何? 里美ちゃんが好きならできるでしょ?」
「……は、はい……」
 『好きなら』といわれると語弊がある。ただ、今はそれを言い争うべきときではないと、紀夫は覚悟を決めて深呼吸を繰り返す。
「あ、あのさ、香山さん……その、いろいろゴメンね」
「え? あ、島本? 嘘! 居たの?」
 壁の向こう側でガサガサと音がする。不意を突かれたことと独り言を聞かれたバツの悪さがあるのがみてとれる。
「倉庫でちょっと探し物してて、だから、その盗み聞きみたいで悪いんだけど……」
「な……うん。そうだったの。ふぅ……なんかそんなことばっかりだね、君は」
「そうだっけ?」
「うん。だって、あの日だってさ、君が倉庫を覗いてて、そんでじゃん。今は倉庫の中からだけどね」
「あはは……そうだね……」
「……」
「……」
 一人不安を漏らしていた彼女だが、気を取り直してもう一度というわけにも行かず、しばし無言の時が流れる。
「……ちょっと、マネージャー君、なんか言いなさいよ」
「……だって、なんて言えば?」
 壁に耳を押し付けた紅葉が睨むようにして言う。
「……あのさ、さっきのことゴメンね。なんか変に気が立っててさ。島本に当たってばっかみたいだよね」
「しょ、しょうがないさ、香山さんは試合目前だもん。憂さ晴らしに付き合うのもマネージャーの仕事だよ。なんなら今からそっち行くよ」
「んーん、いい。なんかこの方が自然に話せそうだから。っていうか、顔みるときっと余計なこと言っちゃうもん」
「……うんうん、いい感じ」
 先ほどまでとはうって変わって二人の甘酸っぱい雰囲気を楽しむ紅葉。
「じゃあさ、この状況ならいえる? 香山さんの不安とか不満」
「そうね……」
「……その調子、その調子……」
 親指を立てる紅葉に紀夫も握りこぶしを返す。
「そうね……、最近さあ、君理恵と仲良くしてない?」
「……にひひ、嫉妬してるぞよ」
「うん、実は理恵さんがちょっと危ない目にあって……。でも安心して、ちゃんと助けてあげたから……」
「ふーん、そっか、理恵がね……なるほど」
「……助ける?」
「……あの、あとで話しますから……」
「ん? 誰かいるの?」
「え? ああ、俺と香山さんがいるよ? なんつって……」
 誤魔化すスキルは未だ成長無し。紅葉もばれまいと口を覆って息すら我慢する。


……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 50 ……タイッ!? 52 ……タイッ!?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前