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堕胎
【失恋 恋愛小説】

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堕胎-1

「ハッ・・・、ハッ・・・、ハッ・・・。」

その日は珍しく雨が降っていた。

だが、山中英雄は体に張り付く制服を気にする様子もなく、夜道を走っていた。


今日の朝、彼は幼馴染である吉井桜から話があるので放課後に教室に残っていてほしいと言われた。

英雄は内心喜びながらもそっけないふりをしてそれを承諾した。

英雄は桜のことが好きだった。


授業が終わり、気持ちがはやるのを抑えながら待つ英雄のもとに桜が現れた。




英雄の親友、信司と共に。




夕日に染まる教室の中、照れくさそうに英雄に2人のことを報告する信司の赤い頬を英雄はぼんやりと見つめていた。





雨も本格的に降り出し、目の前に何があるのか、自分がどこに向かっているのかは英雄には分からなかった。

ただ、桜に対する恋心を自分のなかで殺し、この雨が今までの思い出と、頬の上を走る涙を流してくれるのを願うかのように走り続けた。




『堕胎』

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