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特別な色の華
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特別な色の華-2

***


俊樹と同じクラスの松下という女子生徒が、所謂"いじめ"を受けていた。

彼女は何か特別なことをしたわけではない。

ただ松下が、彼女とよく行動を共にしていた川崎という女子生徒を筆頭に構成されているグループの女子より多少太っていて、笑うタイミングと物を言うタイミングを間違えただけだ、と俊樹は思っていた。

彼は松下のことには全く興味がなく、更に言えばクラスメート全員がどうでも良かった---宮内華子を除いて。


川崎らは、始めのうちは松下の発言を無視をしたり、本人に聞こえるように彼女の外見をからかうようなことを言っていたが、次第にその行動はエスカレートしていった。

クラスメート達は、自身の責任を感じているからこそ何も聞こえていないかのように振る舞い、そのくせいつも耳をそばだてていた。

俊樹はというと、たいてい寝ているか、音楽プレーヤーの音量をいつもより大きくして、周囲を廃除していた。

興味のない人物の諍いなど、俊樹にはやはり興味のないものだった。

もし松下が教室の真ん中で殺されたとしても、彼の態度は変わらなかっただろう。
優しいだとか冷たいだとかではなくて、俊樹はそういう人間だった。


ある日、変化があった。


それまでは精神的苦痛を伴うような、言葉での攻撃が主だったのだが、それが具体的なものに変わっていった。

「調子乗ってんなよ、キモいんだよ。」

川崎の声が教室に響き、松下が突き飛ばされてロッカーに軽く当たる音が聞こえた。

小さい声で、だがはっきりと、『ヤリマン』という言葉も聞こえた。

俊樹は知っていた、どうして今日いつもとやり方が変わったのか。

隣のクラスに在籍する生徒で、女子に人気が高いと言われている男がいる。

彼の落とし物を松下が拾って届けたことが、なぜか川崎達の怒りを買い、それ以前よりも激しく攻撃されているというわけだ。

ああ、くだらない。

俊樹が大きい欠伸をしそうになったとき、ガタン、と椅子を引く音が鳴った。

音がした方向を見ると、宮内華子が立ち上がって彼女達を見ていた。
いや、睨んでいたといったほうが正しいかもしれない。

俊樹の眠気は吹っ飛び、その目が彼女を観察するために働き始める。

華子は、まっすぐ松下らのいる場所に歩いていくと、座り込んでいた松下を引っ張るようにして立たせた。

「こういう無意味なこと、やめてよね。」

華子の凜とした声が教室に響き渡る。

先程までこそこそ話していた生徒達も、今は黙り込んで事の行き先を窺っている。


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