魔性の仔B-2
「…んんッ…んッ…」
あれ以来、毎日同じ夢を見る。
それも、身体中を貫くような快感は日増しに高まっていく。
そして目覚めると、いつも刈谷のベッドの中にいる。──はたして、これは何処まで夢なのかと考えてしまう。
「…んんッ!んッ…うん…」
幼い肢体は、小さな喘き声とともにわずかな痙攣を見せた。
その指先は悦びに濡れていた。
初めての自慰によって昇りつめる摂那、真弥は悟った。──夢の出来事を自分は望んでいるのだと。
──確か…この辺りだったな。
刈谷の運転するクルマは、山向こうを越えて真弥と出会った場所近くに掛かった。
バックミラーで後続車が居ないのを確認すると、スピードを落として周囲を見渡す。
──ああ、あそこか。
すぐに杣道は見つかった。
刈谷はクルマを路肩に寄せて停め、運転席から降り立った。
「あの道の奥に村が…」
男の話では800年以上前からある村。なんとも曰くありげな状況を面あたりにして、久々にジャーナリストとしての──探求心─が頭をもたげる。
刈谷は杣道に足を入れた。
山肌に沿って切り拓かれた未舗装の道は、普段からあまり使われないのか下草に埋もれたようになっていた。
「…本当に、この先に村があるのかよ」
先は山肌に隠れて見えない。刈谷は、下草に足をとられながら登っていくうちに不安になってきた。
「とりあえず携帯とICレコーダーは持って来たから、写真とインタビューくらいは取れるな」
そんな状況でも、別の頭では仕事で使えるかもとしれないと算段していた。
それから30分ほど登っただろうか。刈谷のこめかみには汗が滴る。息も切れ々だ。
「…まったく…これくらいで…運動不足だな…」
ようやく山肌から外れ、道の先が見えた。500メートルほど先で左に折れている。
踏みしめる足に力が戻る。刈谷は、ほとんど日の当たらない道を進むスピードを上げた。
「…ハッ…ハッ…ようやく…」
左に折れた途端、不安は一変した。昼なお暗い山道の景観は途絶え、辺り一面に日が射し込む人の営みを感じさせる風景となった。
角の取れた大小の石を築き、石垣に設けられた棚田や段々畑。カヤ吹き屋根の古い家屋。そして、村を貫くように流れる小さな川や水車小屋。
「こりゃすげえ…タイムトリップしたような気分だッ」
思わず声が上ずった。興奮に我を忘れ感嘆が口をつく。