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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―堕胎編―-1

(1192つくろう小説で!参加作品です。)

 梅雨に入り、じめじめした空気が気持ち悪い。
 しかし天使である自分にとって、人間界の自然は興味深く、面白くて、不愉快さが愉快だった。
「かにかにかにかにかにカニバリズム行進曲?↑♭♪」
「美由貴は相変わらずノー天気ですねー」
 うんざりした声は、子供特有の中性的な、丁寧なのか悪口なのかよくわからない話し方。
 人間ではなかった。子猫のような矮躯、白い長毛に覆われた体、ペルシャ猫のような顔に緋の瞳、手足はなく、代わりに白く桃色に透けて見える蝙蝠のような羽根がある、人語を解する不思議な生物。
 プクトはじめっとした空気が苦手なのか、いつも通りテンション高い美由貴についていけないようだ。
「真琴がいないと退屈ですー」
「すごい! あのね、美由貴もなのームフフフ?すごい! あ、これはもしかして運命的な」
「ボケですねー」
 プクトの返しもいつもより素っ気ない。
 真琴は高等部の二年に上がり、今現在は修学旅行で沖縄にいる。美由貴もこっそりついていこうとしてすったもんだがあったのだが、それはさておき。三泊四日、昨日出発したから帰ってくるのは明後日だ。
「美由貴、レゴブロックで何を作っているのです?」
「お家?☆」
「墓に見えますけど」
「最終的な人生のお家でしょ††!?」
「天使族の美由貴が言いますかそれを」

 ――総ての死は神に還る。

 天使族の、最も基本的な教え。或いは、倫理の源。
 天使族は、たとえ死んでも、絶対の神に還ることが出来る。故に、天使にとって死は恐怖ではなく、神に還る安らぎなのだ。
 だから無論、墓なんて天界には存在しない。
 神というものがなんなのか、正確に理解っている者はごく一部だが、天使にとって神は当たり前に存在するもので、そして絶対だ。
「美由貴だから許される発言ですね。……雨が降りそうですねー。雲が黒いです」
 だらっとけだる気に、プクトが呟く。
 遠くからゴロゴロと、雷が不吉に唸りを上げる。


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