電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―堕胎編―-6
「馬鹿か、あんたは!? 電柱にぶつかって頭がパーになるなんていつの時代のコントだよそれ!?」
「えーん、真琴がいじめるよぉ◎ もっと優しくして♪ 美由貴ケガ人☆」
「あんたそれでも天使か!!」
修学旅行から帰ってきたら美由貴が寝込んでいた。雨の中自転車で買い物に行ったら滑って電柱にぶつかって意識が飛んだらしい。馬鹿か。
「もう美由貴は自転車乗るな」
「じゃあ箒に乗る?☆」
「普通に歩け!」
今でこそいつもの調子だけど、帰ってきた直後は、――心此処に非ずといった感じで、眼は開いているのにまるで何も見ていないような、そんな不安があった。
「ミルクティが飲みたいですねぇ、美由貴はいかがです?」
「あ! じゃあね、あれがいい! ブラック!」
「ストレートね」
なんだかんだ言いながらも、美由貴とプクトの為に紅茶を淹れに行く真琴。
去り際の表情に安堵が見え、心配をかけたんだなと美由貴は少し思う。
「久しぶりの処刑は大変でしたか?」
嫌味でも心配でもなく、ただ訊きたいだけといったプクトの言葉に、
「疲れたね?☆ ああ、肩が凝ったなぁ」
いつも通りの“美由貴”として、言葉を返す。
「天界も、動き始めたようですねー。いつまで真琴と一緒にいられるやら」
「…………」
けれど、この言葉には、咄嗟に返せなかった。
「真琴が真実を知ったら、どうなるでしょうね?」
「言っちゃうの?」
いつも通り、美由貴の道化じみた軽い言葉。
しかし、プクトは知っている。その気になったら、美由貴は真琴を守るためなら、それこそどれほど残酷なことでも、なんでもするだろうことを。
「訊かれたら、答えるですよ。でも、訊かれなかったら言わないです」
プクトの特性を知っているためか、美由貴はそれ以上追及しなかった。
雨は既に上がっている。空は代わりに泣いてくれない。