MY ROOM -spring 葛藤--5
「よし!じゃ、行くか!」
彼女の手を握り、一緒に駆け出した。彼女は驚いていたが嬉しそうだった。だってオレら初めて手を繋いだのだから。
「ねぇ?」
彼女が手を引っ張った。
「何?」
「ゴメンね。試したりなんかして‥。怒ってない?」
怒ってるはずがない。
「怒ってないよ。でも、これで分かったでしょ?オレがホントに楓が好きだってこと。」
「うん!ありがと。」
オレもこの日初めて分かった。女の子がこんなにも繊細で傷つきやすいということ。そして、楓のことを本気で愛していること。
抱きしめたときの彼女の腰はとても細かった。今度はもっと、やさしく抱きしめてやりたい‥。壊れないよう、壊さないようにやさしく。
左右に揺れていた天秤は水平に戻りつつあった‥